6 変態賢者絶叫す
「質問です。このガラスの壷の中のお魚さんは何を食べているのでしょうか?」
「エサ」俺達は即答した。
「このお魚さんはフナの一種なんです」トート先生はにこやかに笑う。
「10日以上、私はお魚さんにエサをあげていません。何をお魚さんは食べていると思いますか?」
……フナってなんか食うのだろうか?釣りのエサには絶対かからないのは知っているが。
「フナはなにも食わなくても生きていけるんではないのでしょうか? 」老人が問う。
「違います。毎日この器を洗えばたちまち弱っていきます」
「水飲んでいるのか? 」「水だけでは生きていけませんね」
頭を抱えてあーだこーだ議論する俺達に「正解は藻です」とトート先生は言う。
「お魚さんのうんちと太陽の光と水で藻が育ち、それを食べてお魚さんが生きているのです」
マジか???!!! というか、フナが食べ物を食べるって初耳だ!!
「ウソだと疑うならパンくずを上げてください。食べますよ? 」
そういって、トート先生はパンくずを壷に投げた。フナはパクッとそれを食べた。
「藻に良く似ているので間違えて食べるようです。ちなみに練り固めれば釣り餌になります」
「「!!!!!!!!!」」
釣り人たちが必死で探し求めていた「幻のエサ」がパン???!!!
「ちょ……ちょっと俺、釣りに行って来るわ」「あ、あんた、いっぱい捕ってきてくれ」
「お、おう!!! 頑張ってくる!!! 」「お、俺も釣りに行っていいですかトート先生!!?? 」
「お話の途中ですが俺も」「私も」
誰も逃げませんからちょっと待ってくださいとトート先生は笑って返す。
「豚さんをうんちだけで食べさせることができるように、
フナはいったんうんちを入れて藻を育てた池で元気に育てて、こうやって光のはいる壷に入れれば」
飼うことが可能です。とトート先生は言う。
「「「……」」」
そもそもフナを飼うという発想がなかった。
「それって、大きく育ちます??」
「今は研究だけですが、頑張れば家畜になるのではないでしょうか?」
フナの生き血は滋養強壮に役立つし、えさ代が殆どいらないのにお魚をいつでも食べられると言うのは魅力がある。
種類によっては珍奇な模様や銀金色を持っているので鑑賞用として高価な家畜になりえるとのこと。
「うおおおおおおおおお! 」「偉大だ!」
「偉人だ!! 」「すげーぜ!先生!!! 」
凄すぎるぞこの先生。家中ウンコまみれなのはさておき。
「これは人糞についた藻を水とお日様の光で育てて食料に加工したものですが」
トート先生はにこやかに言う。
「これを一日3粒と水だけで1年以上人間は生き延びることができます! 」ちゃんと食べて実験しました。とトート先生。
「……」緑の豆っぽい食い物は俺達だけではなくスラムの皆も喜んで食べていた。
「先生……そういうのは早く言って下さい」
「……いや、その、ウンコで薬を作れるって言う時点で怪しいとは思いましたが」
「酒のツマミに結構いけると皆で食っちまったよ……」
「俺、アレ沢山くってたら20年ぶりに女房にムラムラしちまって一晩で5回やっちまったよ」「7回だよ。アンタ」
「今更子供が出来たらどうしようかねぇ。アタシ7回はイッっちゃったよ! 」「9回だよ。お前」
仲が宜しいことで……。
「いいことではないですか。嫌がる豚さんを〆て食べる必要が減ります」
ちなみに豚は人になつく。賢くて可愛いので絞めるのが悲しいくらいだ。
「その豚さんって」まさか。昨日、皆さんに振舞った豚さんですよね? 俺らが〆た……。
トート先生は不思議そうにしていた。
俺が何故疑問に思っているのかと言う顔だ。
「ウンコで育てました」
「「「先生……」」」
俺たちは突っ込む気力もうせていた。




