3 スラムでクソミソ
確かに、この国ではスラム以外から伝染病が発生することもないし、
区画整理と言う名前の破壊活動を行った年は病気が流行らないことは知っているが、
よその国では効果がなく、単に愚策として知られている。
トートが言うには「上下水道のない他国では当然の結果」だそうだ。
「雑草と生煮えの食い物は食うな。生活習慣を改善する。水は必ず布で濾して沸かせ。
必要以上に湿気のあるところに住むな。服と身体と部屋は清潔にしろ。糞壷はこまめに指定の場所に捨てに行け。
それらを怠って病気になった。魔法で治せという患者がきたら蹴れ」と兄貴も言ってたが。
「チーア!!!!! 」
ロー・アースの叫び声。
「ごめんよ! 」
と、あとから声が聴こえてくる。勿論上から。
「水霊よ。我らを護りたまえ」間一髪。
「浄水」の術の応用だが、あらゆる毒や炎から身を護る薄い水の膜を作り出す術だ。
結果的に、俺達4人に降りかかった汚物は綺麗な水に化けた。だがソレが良くない。
「妖精だ」「よそ者共だ」遠くからヒソヒソ声がする。
ボロボロの廃屋の窓は全て締め切られ、
近くを通る男達は危ない視線を投げかけ、ポケットの中から手を離さない。
あちこちからクロスボウで狙っている気配がする。知らないうちにスラムに入り込んでいたらしい。
彼らは区画整理などを行う役人やよそ者を嫌っている。
「あ~」
汚物を当てられそうになったトートは「残念です」と呟いた。
「あのう。うんちやおしっこを人にぶつけるほどあるのなら譲って欲しいのですが」
できればたくさん。と続けるトート。
ポケットにナイフを潜ませていた男達は石の様に固まっていた。




