第四夢 糞のような理想のために プロローグ
「世界を救うために戦いましょう! 」
「やだぁ! 絶対いやだぁ??!! 」
チーアがまたキレた(?)。
今度の仕事は「糞尿収集」。この世界では珍しい上下水道完備の「車輪の王国」では便所はあまり珍しいものでもなく……。 変態技師の熱い理想はあまりにも気高く、そして臭いものだった。世界の平和のために(?)『夢を追う者たち』は再び立ち上がる!
注意!!糞尿を表す言葉が80以上登場します。
今回の依頼人の変態度は極めて高いので注意願います。
そういうのがダメな人は絶対みないでください!!!
プロローグ
う~メシメシ!!
そういって走り出す俺は何処にでもいる冒険者。
しいて違うところをいうなれば、本当は女って事くらいかな?
名前は……チーアって呼んでくれ。
腹が減っては仕事は出来ぬが、仕事がなければ腹は減ったままである。
そんなわけで、今日の狩りも不調に終わった俺は「車輪の王国」王都郊外の森の中にある冒険者の宿、
『五竜亭』に仕事を求めて入り込んだ。
「おーい! アキ!!! メシ食わせてくれ!!!!!!!!! 」
「最初から仕事する気ないでしょ? 」
黒髪黒目、垂れ目に垂れ眉の女性、アキ・スカラーは片眉を吊り上げて微笑んだ。
心なしか、垂れ目に怒気を孕んでいる気もしないではない。
「だって仕事ねぇし」俺はアキの用意したまかないを食べる。
なぜか今週は昼飯に限りアキのおごりになっている。
「うほっ! 綺麗な水じゃないか! これもおごりかい??! 」
上下水道が完備された「車輪の王国」では普通かも知れないがコレは嬉しい。
あっというまにまかないを食べだす俺。アキの薄給にしては実に豪勢な内容だ。
これも普段の俺の行いの成果であろう。
「まぁ馬鹿みたいに食べて」「成長期だからな! 」
睨み付けるアキを無視して俺はメシにありつく。なんせ今週は昼飯だけはまともに食えるのだ。
この至福は変えがたい。
「でも、いいの? ホイホイ食べちゃって」アキは意味ありげに微笑んだ。
ネズミとゴキブリと浮浪者の子供が走り回る他店舗と違い、
『五竜亭』は厨房はもとより食堂部分も掃除が行き届いている。
加えて、木の繊維が腕にちくちくする安物のテーブルはこの店にはない。
さらに、女将のアーリィさんの料理の腕は宮廷料理人並みと評判なのだ。
金持ち連中の残飯を再調理したあまりもののまかないといっても侮れない味である。
「そーいえば今日は格別に美味い! 」
俺が喜びの声を上げるのを見て、
「そーじゃない」
アキは額を押さえてため息をついた。
「……だ。そーです。トートさん」
アキはそういうとため息をついた。
「素晴らしい! 素晴らしいよ! スカラー君!! 」
……嫌な予感がした。
俺はそっち側を振り向かないように気を配り、即座に店を出ようとした。
が、全てが遅かったのだ。
「人糞、家畜の糞から食材を!尿や汚水から飲料水を!!
栄養、味、消化のよさ、値段の安さ。全てよし!我が研究の成果が実ったのだ!」
俺はテーブルに突っ伏し、ドワーフ達が丁寧に鮫の皮で磨いたテーブルを盛大に汚した。
改稿前をご存知の方はお待たせ申し訳ありません。
しばし御付き合いください。
今回は一日2話。午前午後12時投稿の予約掲載となります。




