9 カーテンをめくると 雪女がいた
「そっち、鎧武者がいったぞ~」「あいよ~」
俺とファルコは振り下ろされた剣を何とかかわすと、
はたきをバシバシ当て、「さっさと元の場所に戻れっ!」といって台座の上に追い立てる。
更に暴れるのでモップでボカボカぶん殴って濡れたモップで鎧の顔面を擦る。
「ほら、おとなしくしやがれっ!?壊しちまうぞ?!」「次の部屋行くぞ~」「うんなのっ!」
「ちいや~釘~!」「へいへい」
カーテンをめくると、雪女がいた。
「……何をやってる」「……お山に帰りそびれました」
「掃除中なんだ。邪魔しないでさっさと帰ってくれ」「ううう」
しくしく泣く少女。涙が次々と宝玉になって落ちる。
「だって。だって。遊んでたらいつの間にか春になろうとしてて」
ちなみに、こいつが本気をだして暴れると周囲の人間は皆凍結死する。
「……判ったよ。魔導士がいるから冷凍容器を用意させる」
「はい!」……なんかなぁ。
「ロー・アース! 冷凍容器持ってなかったかっ!」「はい?」
「ほれっ! 割るなよ……」つかつかと歩いてきた彼は俺と雪女を見比べて絶句した。
「こ、こんにちは」ぶるぶる震える少女を見て。
「山に捨てて来い」そういって彼は冷凍容器を俺に渡した。
冷凍容器のふたをひらくと、少女は喜んで小さな容器に入っていった。
「しかし、広い館だな」
見る見る綺麗になっていくけどなぁ。なかなか優秀じゃね? おれら。
「私も、御手伝いします!」冷凍容器が喋った。
「おい。そっち。その床は人を食うぞ」「あいあい」
「そっちのシャンデリア、上から落ちてくるしかけなのの」「あいよ~」
次々と掃除をこなし、厄介な強敵は冷凍容器の氷の精霊に任せ、俺たちは掃除をやっていく。
氷の精霊にモップを持たせると先端部分が凍った。はたきや箒を持たせるべきである。
「お掃除って面白いですねぇ」彼女は空を飛ぶことが出来る。天井の掃除が捗る。
「そうか。もうちょっと頑張ってくれ」「だねぇ♪ 」「……そうか」
はしゃぐ俺たちを愉しそうに眺めている小悪魔。
「そろそろ、御茶にしませんか」
俺たちは「「「「お言葉に甘えます」」」」と応えた。
暖かいお茶を飲んだ雪女は、顔面が一瞬とけた。




