8 モップさばきは軽やかに
「ひらけ。ごま? なの?」「オープン」「かさねた手を其のままに我らの前に道は開ける」
うんうん唸る俺たち。例の扉は開かない。
「仕方ない。広いところ、ホールから取り掛かろう」
無難だな。俺は風の精霊の声で『空気清浄』と呟いた。
小さな竜巻が見る見るホールの空気を綺麗にしていく。
「おお」「おっおっ~!」へっへん。ちなみに、物品は壊さない優れものである。
「石の従者よ」ロー・アースがゲームカードを取り出すとカードが燃える。
みるみる俺より頭一つでかい石像が出来る。「掃除を手伝え」
石像は結構柔軟な命令に対応するらしい。なかなか使える奴だ。
「ファルコ~。そっちの雑巾とってくれ~」「はい~!」
「ファルコ、こっちの修理するから、釘もってきてくれ」「うん!」
独楽鼠のように走り回るファルコ。結構便利だ。
「カーペットは虫干しだな」「そっちのカーテンは洗濯に出すからまとめてくれ」
しかし、戦闘指揮だけではなく、掃除も出来るとか。ホント何でも出来る奴。
「そっち、絵画の中の魔物が出たぞ~」「あいよ~」
即答してから。異常に気がつく。
……目の前に、顔面がデロデロに溶けた悪趣味な魔物。
俺は無言でモップで魔物に突きをぶちかまして、ごしごし擦って絵画に押し戻した。
魔物は厭々しつつ絵画に戻り、元通りの美女になった。




