6 イルジオンの館
「……なんでこんなところに妖魔種がっ??!」
妖魔とは性悪の妖精種である。暗黒神の使途も少なからずいると聞く。
「私は、この『イルジオンの館』の管理を任される者です」
そういって、彼は空中で鮮やかにくるくる回りながら挨拶をした。
「イルジオンの館??!」そう叫ぶ青年。
知っているのか!! ロー・アース!!
「古代魔導帝国時代の大魔導士、『イリュージョン・フォレスト』と呼ばれた男の館だな」
「博識ですな。あなたも魔導士とお見受けしますが」「傍系の末裔だ。たいしたことはない」
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「その幻♪ 命を持ち♪ 心喪いし者に 生ける家族を与える♪
その御技慈悲を持って♪ 飢えし民にパンを与えん♪」
ファルコが唐突に何処からともなく竪琴を取り出し、一曲奏でる。
あ~。あの幻影術を極めたという伝説の魔導士か。詩人なら歌として覚えている。
真偽は定かではないが命と心を持つ幻影を生み出し、食料となる幻影すら生み出せたと聞くが。
「で。そのイルジオンの館がなんでここに?」
てか、大発見だろ。ホントなら。魔導帝国の遺産を見つけた者は領主や国王になった者が少なくない。
「秘密です」小悪魔はニヤリと笑ったように見えた。
そうして、俺達は妖魔に導かれ、「イルジオンの館」に入った。
俺達が入ったあと、その館がすっと消えた事実を、このとき俺達は知らない。
自称、「イルジオンの館」の当主に仕える使い魔の妖魔の導きにより館に入った俺達は。
「汚い」「汚い」「きたない……」一様に同じ感想を放った。
「……掃除はしないのか」
ロー・アースがかなり真剣に言葉を放つ。早くも彼はマントの端を口元と鼻周りに巻き始めた。
「主の魔力があれば掃除など不要なので」
小悪魔はニヤリと笑う。
「でも死んじゃったらこうなったと」
ファルコもどこからかハンカチを取り出して口元を覆い、フードをかぶる。
俺も慌てて布を取り出して口の周りに巻く。
喉をやられたら詩人として不味い。歌が歌えなくなる。
「では、道具はここにまとめています。武装は自由ですので」
小悪魔は愉しそうに笑った。
「頑張ってください。見つけた宝物はまとめて置いてくださいね」




