5 依頼人は小悪魔(インプ)?
「窓から入ったらドカン! 扉を開けたら凍結!?」
「……ソレくらいの罠はあるだろうな。ファルコ。どうだ?」
扉に罠や仕掛けがあればグラスランナーの目をごまかすことはまず出来ない。
しかし、ファルコは俺らの予想の斜め上の行動を取った。
奴は扉をコンコンとノックし、
「ごめんくださ~い!! ぼくらそうじにきたのっ!」
と、大声で叫んだ。
……。
「「アホッォォォォオオオオオオッッッ!!!!!!!」」
思わず俺たち二人は大声で叫んだ。
「開いていますよ~! お待ちしておりましたっ!」
即答が帰ってきて俺たち二人はずっこけた。さっきの慎重な準備は何だったのだ。
「おじゃまするのの!」
そういってファルコはあっさり扉を開いて、勝手に館に入っていく。
俺たち二人はまだずっこけている。
というか、ずっこけた拍子にお互いの頭をぶつけた。目が回る。
「なにしてんの?」
ファルコが目を回して抱き合ってる俺たちを覗き込む。
「あついの~! らぶらぶなの!」
ちがう。と、いいたいがそんな気力もなく。
「「ふらけ る な」」と謎の言葉が唇から漏れただけ。
……!!
俺たち二人はとっさに気合を入れなおし、弓を取り、剣を抜く。
合図があれば即座に俺の弓が敵を打ち、ロー・アースが剣で倒す。
結婚式の準備中もばっちり練習してきたフォーメーションだ。
が。
「だめっ!」
ファルコがその小さな身体を盾に立ちふさがった。
「どけっ??!」
俺は矢を引絞り、狙いを定める。
「……掃除の依頼はしましたが、剣の依頼はしておりませんよ」
その小悪魔はその名前の所以である
銛の形の尻尾と小さな蝙蝠の羽根をばたつかせながらそういった。




