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男装女神は14歳っ!?~夢を追う者達(ドリームチェイサーズ)冒険譚~  作者: 鴉野 兄貴
愛と箒と埃をもって

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3 ただいま

 「飯くらい自分で食えよ……」

俺があきれ返っていると。俺の介抱で回復した親父は、

「だって、だって、かわいい娘の手料理を家で食べられると思ってたもん」

1メートル90センチの身体をもじもじさせてもかわいくない。


 「はぁ。まったく。『帰ったぞ』馬鹿親父」

「『お帰り』。わが娘」


……。


 「……変だな。家があるって」少し安心して涙が出た。

「……まぁ、おいおい慣れてくるさ」親父はそういうと。


 「なぜ俺を抱きしめる?」

「かわいい娘にチューしたくなるのは親父として当然の……。ぐばっ?!」

思いっきり頭突きをかまし、黙らせると俺はシチューつくりの続きを開始した。

アーリィの料理に負けてたまるかっ?!! もっと美味いのを作ってやるっ!!


 俺は料理を作りながら、この二週間に起きたことを呟いていた。

クソ親父が聞いているかどうか知らないけど。

伯爵家の莫迦息子の所為で多額の借金を負わされたこと。

助けたはずの娘にその請求書を押し付けられたこと。

借金を減らすべく旅立ったこと。同行した二人の仲間。


 「待った」???

親父は深刻な顔をしている。


 「どった? 親父」

「その二人を連れて来い」

「???」なんだろ。


 「うちのかわいい娘の純潔を奪っ……」

俺はだまって彼の顔面に手元の薪を投げつけた。

誰が純潔を捧げただ。奪っただ。このエロ親父め。


 「……じゃ、まだ処女か」

あたりまえだぁあああっ??! このボケ親父っ!!


 「……」腕を組んで何事か考え出した親父。こういうとき彼はろくなことを考えない。

「……まさか、結婚は500年後とか言い出さないよな?

孫を抱かせてくれっ! そしてチューさせてくれっ!」と叫ぶ親父に。

俺はもう一本目の薪を投げつけた。


 何処まで話したっけ?

可愛いグラスランナーのファルコ、無愛想だが頼りにならなくもないロー・アース。

「そうか。その男に惚れたか」はぁ?

「バッカいってんじゃねぇよ。親父」呆れてモノがいえねぇぜ。莫迦親父。


 「ん~。そうか?さっきからそのロー・アース君という男の悪口ばかり言っているな」

そりゃそうだろ。言いたいことは山ほどあるしな。

あの無気力な態度、無関心で無感動な顔、無責任な言動。

男として言いたいことはアホホドある。


 「そうかそうか。今度連れてきてくれ」

なんで連れてこなければならない。莫迦親父。


 「ファルコは連れてくるよ」可愛いし。

「うーん。まぁミリオンの息子には興味がないわけじゃねぇが」知り合いか? 親父?


 「まぁ、そのうち向こうからくるさ。ミリオンたちなら」

ふーん。


 「おい。親父。出来たぜ」

「おっ! 待ってましたっ! 久々の娘の手料理だぜっ!!」


 あんた、料理も得意だろ。お袋より巧いし。とは思ったが黙っている。

二週間も娘の料理を待って一口も食わなかった親父にはあきれるばかりだ。


 他にもいっぱい話した。

人を撃ったこと。殺さなかったけど傷つけたこと。


……親父は黙って聞いてくれた。


 ドワーフの村を救った。らしいこと。霧雨のこと。

『ちぬれのばら』のこと。


 「『ちぬれのばら』? だと?」

親父は一瞬厳しい表情をしたが、何事もなかったようにシチューを食べだした。


 「なんか、殺すつもりならいつでも出来る状況で握手しろっていってきたぜ」

男として、完敗だ。相手女だけど。

「……なるほどな」親父は無関心そうに言うが、この表情は真剣なときの表情だ。

「痺れるほどカッコよかったな。完敗だよ」「……」


 「チーア」ん?

「良かったな」

まぁ、男よりカッコいい女だったしなぁ。弟は最悪だったけど。

「万一、戦っていたらお前はこの世にいない」……そうだな。


 俺たちは食事を続ける。

『孔雀石』たちと友達になって、結婚式があわただしく準備されて、

俺たちが仲人を勤めたことも。

『孔雀石』が本当に、本当に綺麗だったことも。


 「『にがよもぎ』の娘……か。そうか」

……時々、親父って一人でなんかボーっとしてるんだよな。

オナニーが足りないんじゃね? とは思うが。


 「ほら、コレがその『希望石ダンビュライト』を魔法加工した石のバックルだぜ」

そういって、親父に透かし彫りの鞘とバックルを見せてみる。

前のベルトとバックルはチンピラに壊されてしまっているので本当にうれしい。

「……妖精の騎士。か」

???


 「チーア。魔を討つは妖精の騎士。妖精に愛された者だ。覚えておけ」

???意味ワカンネが。まぁ頭を縦に振っておこう。


 「それからっ! それからっ!」

珍しく親父相手にいろいろ愉しく話した。不思議なものだ。クソ親父なのに。

いろいろ話して、話して。元気に話して。話し疲れて。


小さく、消え入りそうな声が。最後にわたしの喉から漏れた。

 「……待っていてくれて。ありがとう。

心配かけて。ごめんなさい。お父さん」

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