表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
男装女神は14歳っ!?~夢を追う者達(ドリームチェイサーズ)冒険譚~  作者: 鴉野 兄貴
愛と箒と埃をもって

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/323

2 初仕事はお掃除?!

 「……早速だが、仕事だ」

エイドはニヤリと笑った。


 ああ。こいつらがありもしない借金を押し付けて俺を勝手に冒険者にした事実を忘れていた。

くそったれ。アーリィめ。あの天使の笑顔で食えない娘だ。正確には娘じゃないんだが。

(作者註訳:産褥期の危険が高いこの世界の感覚では女性の24歳は結婚適齢期をすこしすぎています)


 「……どーせ断る余地もないんだろうからさっさと言えよ。エイド」

仏頂面で続きを促す俺。頭をボリボリ掻いて小指で耳垢をほじるロー・アース、

 そして。アーリィの胸で苦しそうにパタパタしているファルコ……。

……あ。動きとまった。死んだか。惜しい奴をなくした。


 「仕事は掃除だ」

……はい?


 「……そうじ?」

今、こいつ掃除って言わなかったか?


 「魔物退治でもしてこいってか?」

俺は、一応聞いてみる。


 「いや」

エイドは愉しそうに呟いた。


 「箒をもってする掃除だ」

……。平和的でよろしい。しかし、俺たちは借金苦の冒険者モドキである。


 「……その掃除とやらで。

どれほどの借金を減らしてくださいますか。おやさしいエイドさまは?」


 「……ばば~んと一人500銀貨は保証する」

「ふざけるなっ!!!!!!!!!」

俺はブチキレてイドに殴りかかったがあっさり猫のように首筋を掴まれた。

「離せ! こんにゃろっ??! 離せっ!!」


 ちなみに、銀貨500といえば一般労働者の一ヶ月の稼ぎに匹敵する。

掃除でここまでの報酬が出るはずがない。舐めんなって話である。


 「……エイドさん。掃除で『500も』出るんですか?」

ロー・アースが吊るされて暴れる俺を嘲笑しながら質問する。


 ちなみに、俺たち三人のうち、一人は巨乳にKO済み。

一人おれは猫のように吊るされている。

奴が倒れれば冒険前にして俺たちは全滅である。


 「そう。いい話だろ?」

エイドはハハハと笑って俺に微笑んだ。


 「やってくれるよな?」

もちろん、選択権などあるわけがない。俺はカクカクと首を縦に振った。


 エイドの話ではこの森の外れの館の掃除をするだけという。

楽そうな仕事なのに銀貨500枚。裏があるんじゃねぇか?

 「それは、行ってからのお楽しみ♪」

アキと名乗った恩知らずの娘は俺にそういってウィンクした。


 「少しは休ませてくれよ……」

ロー・アースの抗議も理解できる。


 「……毎日、エフィーちゃんが心配して来ていたぞ」

「そうよ。早く元気な顔を見せてあげなさい」「そうそう。可愛いじゃん」

???

 ……一瞬、ムカムカときたというか、胸がチクッとしたというか。

最近体調が本気でおかしいな。今度兄貴に遭ったら聞いてみよう。


 「じゃ、イーグル! お母さん腕によりをかけてご飯をつくるね!」

そういってアーリィはファルコを開放すると店の奥に消えた。


 「ファルコ。すまんな。まだ不安定なんだ」

苦しそうにエイドはそういった。ファルコと二人の子供は瓜二つらしい。

死んだと思っていた息子と瓜二つの子が数年経ってから現れる。

お腹を痛めて産んだ子を持つ母の心、察するに余りある。


 「まぁ、ファルはいい奴だからだいじょ……」あれ?

ファルコはボーっと突っ立っている。よかった。生きてたらしい。

「……」彼の目の前で手を振ってみた。


 うん。ダメだ。死んでる。反応がない。

「ふぁるこ~! 死ぬなっ??!!」

人工呼吸にまでは至らなかったが、顔を何度かひっぱたいたら息を吹き返した。

マジで良かった。マジで。


 「……じゃ、明日の朝の鐘7回目の時間に改めて来い」

苦笑いし、エイドは俺たちに料理を出した。


 「ああ。これはタダだ。当面タダでいいぞ?」

また借金上乗せかとビビる俺たちに彼は愉しそうに告げた。

妻が取り乱した謝罪もこめているから気にするなとのこと。


 ……残飯なんか出しやがって。

そう思って俺は一口だけ食ってやる。俺が作ったほうが美味いに決まって……。

……え??!


 「??!」「!!!」「おいしぃ~~~!のっ!!」

マジ、美味い。どうなってるの??! 残飯を直した料理なのに?!


 アーリィは愉しそうに笑っている。

「おいしいでしょ? 腕によりをかけて作っちゃいました」

そういって、ファルコを圧殺した巨乳ぶきを前に押し出す。

胸を張っているつもり。らしい。

 ……あんなにでかくならんだろうな。俺。今まったいらだから良いけど。

あれはどうみても動きにくそうだ。ああなったら俺は死ぬ。


美味い料理を食べ終え(当面タダらしいので今から楽しみだ)、

「じゃ、家族に挨拶して、英気を養ってから来い」

……といわれて俺は大事なことをいまさら思い出した。


「そ~いえば、親父に狩にいけって言われてそのままだったなぁ」

あの小屋、何処にあったっけ。外からじゃわかりにくいからなぁ。


やっと見つけた小屋の中では。

俺 の 親 父 が 干 か ら び て い た 。

2週間メシくってないのに生きてるとか、ありえんから。やっぱり親父には常識が通じない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ