7 炭を金に。
シンバット。急げ。
轟々と風を残して走る愛馬シンバット。
木々をすり抜け、露店を飛び越え、家々を飛んで風のように。
そういえば俺、競売の場所知らないぞ。その事実に気がついたとき、シンバットは立ち止まっていた。
「降りろ」そういわれた気がして、降りる。
「ありがとう。頑張ってくる」彼の頬をなでると、彼は黙って俺に首を擦り付けてきた。くすぐったい。
見るとファルコの驢馬がいる。おそらく先行していたのだろう。
「行くか」
透明化の術を自らにかけ、俺はその館に潜入した。
「王国大金貨一万枚」「一万枚が出ました」ざわめく群集の前で手枷をつけられ、瞳を閉じて耐える長身の美女を見て俺は思わず姿を現してしまった。
「高司祭さまッ 」
高司祭さまのほか、幹部連中やジェシカにカレン、同僚の下級神官たちも少々混じっている。
唐突な闖入者である俺に一斉に場の視線が集まる。
「チーア?! 」
目を開いた高司祭さまに告げる俺。
「薪も火墨も手に入れましたッ もう身を売らなくて大丈夫ですっ 」
手を振って誇らしく告げる俺を見て嬉しそうな笑みを浮かべる同僚たち。
「それ、ほんとうっ?! 」手枷を抱き上げて喜ぶレティシアにウィンク。「俺はウソつかねぇ」
「やった。おねえちゃん。チーアはやってくれるって言ったじゃない」「う、うん」肩をぶつけ合って喜ぶミズホだかミナヅキだかの双子に微笑む俺。
「というわけで、この『花婿探し』はお流れだ。散った散った」
そう叫ぶ俺の首を誰かが掴みあげた。
「聞こえません。伯爵様の王国大金貨金貨一万枚で最後だそうですが」
その男は告げた。「私は王国大金貨一万二千枚を出しましょう」なっ?!
そんなカネ何処にあるんだよ。俺は伯爵家のボンボンを見るが。
彼は黙って首を振った。無理らしい。
「まて、俺は火墨をドワーフから譲り受ける契約を結んできた。王国大金貨一万や二万ではすまない価値だ」
「では、その火墨とやらを金貨百でもよい。炭を金にしてもらいましょう」
俺のか細い首を締め上げながらその男は告げた。
「競売を続けましょう。一万二千より上はいますか? 」
「二万枚だ。現物で出してやるぜ」じゃらじゃら。
小さな袋にどうやって収まっていたのか。
その膨大な黄金の輝きは舞台の上に零れ落ちて行く。滝のように。
「き、きさま何処からッ?! 」「さぁ……風や水が入り込み、ネズミが出いりするのに」
その無愛想な青年は憎たらしく笑う。
「ぼく等が入れないわけないののっ! 」
金の塊を吐き出し続ける小さな袋を持って、小さな妖精は勝ち誇ってみせた。




