6 毒の風と希望の風
「やっぱりお父様を説得するのは無理でしたね」
「ズリ山に近づくなだけではな」迷惑をこうむったのは子供だけだ。
「つまんないねぇ。面白いのに」
遊び場を潰される無念はファルコにも理解できるのだろう。
「それに、水の流れと関係ない家の子や大人にもあのイボがあるって言われた」
俺が呟くと、ロー・アースはやる気なさそうに頭を掻く。「……難しいな」
「でも、毒だとわかっただけで収穫です」『孔雀石』さんはうれしそうだ。
「毒なら解毒祈祷でなんとかなります」「そうだな」
呪いを解く祈祷より難しくない。かなり状況は改善する。
「ですが、作物や薪などに影響しますからね」「ああ」
去年の冬も寒かった。このまま作物や薪の元となる山の木が枯れることがあれば。
「お~い! お嬢!!」「あ。『藍銅鉱』っ~~~~!!」
「……席を外したほうがいい?」短い脚でどたばた駆けて来る『藍銅鉱』を見ながら俺達三人は気を使ってみるが。
「……余計なお世話です」
叱られてしまった。
「はぁ。はぁ。確かに解毒祈祷は効いたぜ」
やっぱりな。窯は言われたとおり閉じたそうだ。
そして早くも壊し始めているという。
思いっきりは凄くいい。鈍いけどその分決断力がある。
「でも、おれっち、あれを口に入れたりはしてねぇんだが」
そう。それが気になっていた。
「ロー・アース。どういうことよ?」
俺は彼に解説を求める。
「どゆこと? どゆこと?」
ファルコはロー・アースの足元でぴょんぴょん跳ねている。
「俺に聞かれてもな」
彼もよく知らないらしい。
「アイツがここにいれば芝居がかった拍子で説明してくれたんだが」
無責任なあのボンボンは逃げてるし。
「うーん。村長を納得させることが出来ないとお山から毒が出続けるのか」「ですね」
今後、住民に影響がなくとも、作物や山の木々には多大な影響がでる。既にお魚には影響が出ている。
「おれっちの窯はちゃんと煙突つけて、煙を人が吸わないようにしてるんだがなぁ」
感心する。流石ドワーフ。設計もしっかりしていたと思う。
設計といえば、あの「風車」はよく出来ている。風や煙をうけてクルクルと。
「……煙。煙???!」あれ?なんかひっかかるぞ。
「ヒ毒は、ダンゴを燃やして残りかすから作るんだよな」
「そうだな。おれっちの薬はそうやって作るな」
なんか引っかかる。
「ああああああ!!」
なんだ?急に叫ぶな。ファルコ。
「それて。火に燃えないってこと??!」そうなるな。ファルコ。
「燃えないのはこなになるんだよね?」
「ああ」「うん」「ですね」「そうなりますね」
「あんだけ強い風でもやすんでしょ?それなら」???
「細かい粉になって、煙に混じって、空から降ってくる?」「「!!!!!」」」」
それだっ??!繋がったっ??!!
それなら、畑が離れている家のドワーフにも被害が及んでもおかしくないっ??!
「よし、調べる!」
「うん!」「解った」
「おれっちも手伝うぜっ?!」
「私はお父様や長老様方を呼んできますっ!」
クルクル回る美しい水車や風車の下。
見えない「敵」に噛み付く糸口。逃がすわけにはいかない。




