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男装女神は14歳っ!?~夢を追う者達(ドリームチェイサーズ)冒険譚~  作者: 鴉野 兄貴
レディの裸にご用心!

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1 貧乏のバカヤロウ

 薄暗い店内に俺達が入る。

コツコツと俺達の靴音が響き、店のカウンターに迫る。


 「仕事、ないかい?」俺の声。

ここのところ3日間、マトモなものを食べていない。成長期には少々辛い状況だ。

「俺はまだ未成年だ。親の義務を果たせ。飯食わせろ」

……と言って同じ狩人であるオヤジに飯をたかりに行った所、

オヤジは黙って俺の顔面めがけてタマネギを放り投げやがった。


 よって、ここ3日、タマネギ入りの塩スープでしのいでいる。

(同じ家に住んでいるのだが、オヤジの教育方針とやらで飯は自給自足なのだ)


 残りの二人に関しては。片方はその愛嬌でどこからかもらったクッキーをかじり、

もう片方はいつ食べているのか分からないが、飢えている様子はない。

腹が減っているのは猟の調子の悪い俺だけのようだ。


 「あるぜ」店主はつぶやいた。天の助けだ。

彼はビリッと壁に貼り付けた羊皮紙を剥がす。

「北の広場に来ているサーカス団の洗濯のアルバイトだ」


「……」

「……」

「みゅ?」


 俺は空耳かと思い、もう一度聴く。

「エイドさん。……今、なんて言った?」


 店の主人(熊か獣かゴリラか食人鬼――オーガ族――を思わせる容姿だが一応人類、らしい)、

エイド・ファイブドラゴンズは一言1句、ゆっくりと発音した。

「北の 広場に 来ている サーカス団の 洗濯の アルバイト」

そう言い終わってから意味ありげにニヤリと笑った。


俺は叫んだ。「 ふ ざ け る な 」


 俺は言う。「エイドさんは依頼人に紹介料もらって冒険者の仲介をするよな?」

エイドさんはニヤリと笑って一言。「そーだぞ?」

俺は続ける。「……その仕事の裏を取って、一番向いているやつらに話を持っていくよな?」

「ああ」

 「洗濯の何処が冒険者の仕事だぁあああああ!

そんなフザケた依頼するやつもする奴だが、追い返さずに紹介する奴も紹介する奴だぁ!」

俺が怒鳴りつけると、エイドさんは小声で呟いた。


「三食昼寝、おやつつき。住み込みOK」

……。


 最初に声をあげたのはファルコ。ファルコ・ミスリル。

「やろやろ!!ねぇ。『てぃあ』。『ろぅ』。僕せんたくしたい!!」


 ――その名で呼ぶな!――

……と一瞬怒鳴りかけたが腹が減っていたのでもう少し建設的な意見を述べるだけに留めた。

「おいおい正気かよ!誰が悲しゅうて、春先の風の当たる中に、

男三人が雁首並べて洗濯ぅ?むなしいぞ!!なぁ!!ロー!?」


 「金がねーんだからしゃーねーさぁ〜あ」

発言の途中で欠伸。そして伸び放題の黒髪を掻きむしる。

……こいつの無気力そのものの話し方が俺は嫌いだ。

こいつがロー・アース。一応、俺達のリーダー?ってことになっている。


 ……今ここでこいつを説得しないと、冒険者なのに洗濯で飯を食う羽目になる。

俺は奴の説得を開始した。「ファルコは洗濯しても綺麗にするどころか汚すだけだと思うぜ。

それよりかさぁ!!もっと楽しくって、ワクワクするような仕事をやろうぜッッ!」


 「で。そのワクワクするような仕事ってどこにあんだ?」

俺達は冒険者であるという自負にすら無関心な奴の発言。そのたった一言が俺を黙らせた。

勿論。そんな仕事はない。


 「プクプク♪あっわ あっわ♪ わっぷっぷ♪ わっぷっぷ♪

ぴっちゃぴっちゃ♪ あわ あわ♪ ごっしごしぃ♪たのしいなっったら たのしいな♪」

スキップしながら珍妙な歌を歌うファルコを見てローは一言。

「ほら、ファルコは乗り気だぜぇ……」

欠伸のような口調で喋るローにイラつきながら、心の中で俺は叫んだ。

『貧乏のバカヤローーーーーーーーーー!』


こうして、俺達『二人』は春先の寒い中に洗濯をして暮らす羽目に陥ったのである。

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