2 どっきり! 黒と思ったら赤かった件
話は戻る。再び慈愛神殿の一室。
「あの。どういうことなんですか? 」
ひとしきりブチキレて落ち着いた俺はロー・アースから逃れようとする高司祭さまになんとか近づき、彼女の両の頬を掴んで自分に向き合わせた。
無礼にも程があるのは理解しているが、彼女なら許してくれるだろう。
俺の神殿内の地位は「冒険者」であり、一旦返上されている。
が。同時に馬術と駆け足、正義神殿へのコネが太いことから、
高司祭さま直属、正義神殿との『連絡役』という名目になっていて多少の無礼は許される。
「……」うるうるとした瞳で俺を見る美しい女性。「……しっかり説明してくれませんか? 」
見方によっては迫っているようにしか見えないが、この面子は俺が女だと知っているし。
「そ、それは」うん。
戸惑いと躊躇いをみせる高司祭さまの口から驚愕の台詞が飛び出した。
「かくかくしかじか」「わかるわけねぇ??! 」
どうしても言いたくないらしい。
「額合わせていいっすか? 」てっとりばやいし。この女性なら安全だ。
俺は誰かとお互いの額をあわせた場合、相手の表層心理が読めてしまう。
唇や性器同士だともっと感度が上がるらしいが試したことはない。
俺の提案にぶるぶるぶるっ! と首を振る彼女。涙目だ。
「観念してください。もう」無理やりあわせたので頭突きになった。星が見えた。
「……」彼女の記憶の一部に触れた俺は呻いた。
「俺達、このままだと全員が娼婦になるんですね」
真っ青な顔で高司祭さまは頷いた。
「だって。だって。こんなに薪が高騰するなんて思わないじゃないですかっ??! 」




