4 ズリ山にて
「……これはすげぇな」
「何十年分もの土砂を積んでいるからな」
鉱山から出た土や泥、役に立たない石を積んでいるらしい。
こっちでも子供達が遊んでいる。
「ズリ山が崩れると危険だからと忠告したのだが」
『『孔雀石』ねぇちゃんにはナイショ!」だそうだといって彼~ロー・アース~は苦笑する。
まぁ。たぶん『孔雀石』や『藍銅鉱』もここで遊んでいたんだろう。
「で、なんか解ったのかよ?『先輩』?」
俺は嫌味を言ってやる。
「……いや」
「はははっ?たいしたことねぇな?」
からかう俺を無視して彼は続ける。
「呪いの類は解らんな。とりあえず呪いではない。
俺は坊主じゃないが、それだけは確かだ」
へえ。鋭いじゃん。
「かといっても病気ではない。おそらく」???
「毒?」……。コイツも鋭い……。
「鉱山からは呪いと言われるものがよく出るそうだが、
最新の魔導士の説によると地中にある毒や病気の元の一種ではないかという珍説があるんだ。
もっとも、正義神殿の異端審問官にソイツは事情聴取を受ける羽目になったがな」
ため息をつく。
「伯爵家の跡取りでなければどうなってたやら」
アイツかっ?!あの諸悪の根源かっ??!
俺がそういって地団駄を踏むのを楽しそうに見ている奴。
「でな。ソイツの珍説には続きがある。その毒が雨に解けてそこら中の大地を汚すんだそうだ」
……。
俺は黙って手ごろな石を手に取る。
「見ておけ」
「ああ」彼は俺の意図を理解したようだ。
「……"浄水"」石は砕けた。
「……アイツは異端審問を受ける必要がなかったようだな」
彼は無関心な態度を崩さなかった。
「……つまり、この山は」
「毒の塊だ」……。
「おいっ!!ガキどもはここで遊ぶなっ??!!!」
俺は大声で叫んだ。一刻も早くなんとかしないと???!
ガキどもを追いたて、俺は走る。
うしろからロー・アースの足音が聞こえる。
ガキどもの手にもイボがあった。
雨で毒が解ける。毒を雨が溶かす。水は上から下に流れる。
「ロー・アース!!」「……なんだ?」
「石垣のある畑、全部調べろ」「???」
「畑に毒が混じるなら。上から順だ。石垣があるんだからな」「……!!」
この村は鉱山が一番上にある。つまり、石垣ごとに毒がたまっているはずだ。
「どうやって調べる?」「……毒なら、毒なら」
「その作物を定期的に食ってる家の連中の症状を調べれば、差があるはずだ」
「上からなら。上から順に悪くなっているなら」
コイツは。コイツは。
「これは呪いでも病でもねぇ!毒だっ!!」
俺は叫んだ。精霊の嘆きが身体に沁みる。彼らの嘆きが身体に痛みを呼び寄せる。
この嘆きを。この怒りを。消し去りたい。




