1 雨に打たれば
「……遅くなったな」
ロー・アースは雨の中を歩いていた。
この世界の雨は冷たく、寒い。そして雲は常時太陽を覆い隠し、雨が降ろうものなら昼でも真っ暗になる。
冷たく、寒い空の下、彼は家路を急いでいた。
「エフィーになんて言おうか」少し悩むが、先に部屋に戻ったほうが良い。その視線の先に異物。
「! 」
雨に打たれて倒れている人間を見つけた彼は急ぎ駆け寄る。
体温低下は命に関わる。「御無事ですか」
……。
……。
「ありがとうございます。私の名前はミリアと申します」
体温を調整する精霊力の調整をロー・アースの妹であるエフィー=ネイから施され、
暖かい茶を手に一息つく少女は性欲の無いロー・アースやエルフであるエフィーから見てもそれなりの容貌だった。大目のそばかすは目に付くが。
「あなた様はそれなりの貴族とお見受けしますが」
我々の世界で言えば六畳一間の広さの狭すぎる部屋だが、珍妙な寝具に不思議な魔法の品々。
足元にある草で出来た床板。大きな作業机はそれなりの財が無ければ手にすることは叶わない。
「メイドでもなんでもします。あなた様に仕えさせてくださいませ」「絶対ダメ」
エフィーは即答でミリアと呼ばれた少女の申し出を断った。




