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第二十一夢 白くて柔らかなふくらみを(三人称) プロローグ
「もうっ! みんな最近臭くない? 」
「うっさい」「しつこいの。アキお姉ちゃん」「アキ。いい加減にしろ」
アキ・スカラーが彼らに絡むのは良くあることだが。
「アキ様。我が主を愚弄するつもりでしょうか」
アキの機嫌が悪いのは別の理由があった。
「リリ。アキは俺の親友だ。聞き流してくれ」「しかし」
ロー・アースの奥に控える、質素に見えて絹より高価な木綿の服を身に纏った冷たい容貌の少女。
肌の色は陶磁のように白く青く、頬と唇は赤く、銀の髪に喪服を思わせる衣装。
「リリねぇちゃん。あわてないあわてない。ひとやすみひとやすみ。なのの」
小さな妖精、グラスランナーのファルコの一言で、リリと呼ばれた少女も矛を収めるが。
「なによ。そいつっ?! 」
アキはついにキレた。無理はない。
ロー・アースに抱きつく年齢の割には胸の大きい少女。
その正体は暗殺者『黒き針』の二代目である。アキはそれを知らない。




