13 区画整理
「おーい! あっちの資材どこに持っていけばいいんだ~! 」俺の叫び声に。
「こっちだ! こっち! 」グローガンが叫びかえす。
鋸を引く木屑の香り。埃の味。
トンカンとやかましい金槌の音。俺の肩にのしかかる荷物の重さ。
そして。建てかけの建物たちに跨るヤクザ者一家改め隣の町の石工ギルドの面々。
「グローガンさん~~! 『五竜亭』の冒険者達が手伝いに来てくれてますよ~! 」「おー! いくいく! 」
手下どもの報告に振り返ってみる。
俺に手を振る盗賊。薄い金髪の半身を隠したエルフ。ほぼ全裸の少女。
ぞろぞろと現れるヤクザ者連中。子供がみたら泣くだろう。
「ははは!俺らの家、ちゃんと建ててくださいよ??!! 」
「うっせ! 不法建築建ててんじゃねぇ! しっかり立て直してやるから、まってろよ! 」
バカなやり取りをしながらも作業は続行されていく。冬場で寒いので冬の精霊の加護を呼び出す。
少しだけ寒さを緩和できるはずだ。
「ごはんだよ~! グローガン!! 手下の皆さん! 」
小さな身体から大きな声を振り絞り、手をぶんぶんさせる俺の親友。
「お~! アンジェ!! 今忙しいから、とっといてくれよ!! 」
「おらおら! 父ちゃんの名前を汚さないようしっかり働きな! 」「母ちゃんは無理すんな! 」
ローやファルコ、五竜亭の冒険者も作業に参加している。
「こういうのは苦手なんだが」「もきゅ? 土の練り具合はこんなの? 」
シュッシュと藁と漆喰を混ぜた土が手際よく石壁に塗られていく。普通の石の壁より暖かいはずだ。
「兄ちゃん達筋いいねぇ! 」手下どもの中にはもともと左官なヤツもいる。
「冒険者やる前は職人だったからな! こういうのは任せろ! 」
「任せた! 俺は後ろで歌ってる! 」「こら! 」大騒ぎだな。
「兄ちゃんたち、ガタイはいいけど、こういうのは全然だね! 」「すみません」
見ると、役人たちや正義神殿の騎士たちまで作業に参加しているようだ。珍しい。
「みなさ~ん! ご飯ですよ~~! 」「は~~い!! 」
高司祭さまの呼びかけにこたえる野郎共。
慈愛神殿の美女達に微笑まれて逆らえる男共は少ない。
「いいですか? 上下水道、側溝の充実が水難や伝染病を大幅に防ぐのです」
変態学者の指導が聞こえる。相変わらずウンコくさいが、それ以上に理想が臭い奴だ。
スラム街の建て直しは順調に進んでいる。道は大きめに、家々は高めに作り直すらしい。
あと、二階以上でも使える下水道を試験投入するらしい。
「道が大きくなったら攫われずにすむね!! 」うっさい! アンジェ!!




