7 「気が進まないんだが」
「気が進まないんだが」
ロー・アースは嫌そうにしている。
「男前さんだねぇ! うちの旦那の若い頃を思い出すよ! 」アンジェラ婆さんは笑っている。
どうやったらその美男美女からあんな禿の筋肉達磨ができるんだ?!
「まとめてかかってきてもいいよ? 」と婆さんは言うが、無理言うな。歳考えろ。
アンジェがアンジェラの技を見てみたいというと、婆さんは嬉しそうに「いいよ」と答えたのでこうなった。
「手加減しないほうがいいよ? 」とアンジェラ婆さん。ロー・アースは珍しく礼をする。
とはいえ、婆さんを殴る趣味は流石にロー・アースにもないのだろう。
いつの間にか手を握る。小手返しだな。大抵はコレで決まるのだが。
逆にあっという間に巻き込まれるように引き付けられ、
婆さんの枯れたような腕がロー・アースの首にまともに入った。
倒れこんで咳き込む暇もなく、婆さんの杖がロー・アースの喉下寸前で止まる。
「私がアンジェラって納得してくれたかい? 」皆に向かってそういうと婆さんは腰を抑えた。
「いかん。さっきのラリアットで腰が」「無理すんなよ! 母ちゃん! 」
……。おい。おい。おいっ?!
うーん。高司祭さまやマリアの親父以外でロー・アースを赤子扱いする奴が他にもいるのか。世間は広い。
「男前さんだし、もう少し」「無理すんな母ちゃん! 」「腰に負担ない程度にするよ」
気がついたら俺もファルコもアンジェも婆さんにポンポン投げられていた。
「お兄さんは技の組み立てのセンスと基本技の練習はいい線いってるね。ただし、技の種類が少ない」
「お嬢ちゃんは子供の割には寝技と組み付きはいい線行ってるよ? 金的蹴り以外の立ち技を練習するべきだね」
「坊やはさすがミリオンの子だねぇ。文句なし!
うちの子もこれくらいなら……もうすこし一撃で仕留める技があるといいね」
アンジェラ婆さんはロー、ファルコ、アンジェにそれぞれ感想を述べる。
あの。俺は? 俺は?
「お嬢ちゃんは格闘挑まれないように俊足生かして逃げまくったほうがいいね」……うっさい。
「チーアは男の子だよ? 」アンジェが気を使ってくれた。
「ふーん? 」アンジェラ婆さんは意味ありげに笑う。
見透かされたようで居心地が悪い。
「さて」
アンジェラ婆さんが笑う。
「久しぶりに稽古つけてあげるよ。グローガンや」
グローガンはいつの間にか消えていた。なんとなくぐれた理由がわかったような気もする。




