5 熊だ 猪だ あ、オーガだッ 「人間です」
場所変わって『五竜亭』。
俺とファルコとロー・アースがテーブルについている。
他に、何故か勝手に座っているグローガン。
「かぁちゃんがなかなか認めてくれないんだ」
そりゃ息子がヤクザやってりゃそうなる。
「ロリコンだからだろ」
俺が皮肉を放つと「ごほっ! ごほっ! 」とビールを吐き出した。
「不潔だ」
色々な意味で。恋愛は自由と言ううちの女神様も子供ができない程未熟な身体の相手とのアレコレは。
「ちがいます! 安いからです!!! 」「もっと悪い!!! 」
「男並みに安いんですよ?! 」「やかましい!!!!!! 」
「このままでは、家を継がないといけなくなる」苦悩するグローガン。いいことじゃないか。
「ちなみに、ご実家は? 」ロー・アースが何気なく問う。「石工ギルドの棟梁だが? 」いいことじゃないか。
「結婚相手とか決められてしまうんですよ?! 」
最高じゃないか。ヤクザやってる禿と結婚させられる若い娘の身にもなれ。
「親父の技を今から覚えないといけないんですよ??! 」きついが頑張れ。
高司祭さまが言うには個人の力より集団を生かす力があれば上はなんとかなる。
「知り合いがいうならコネと親族の実績と周りの人間でなんとでもなるそうだぞ」「本当っすかぁ? 」
言っている人間が『聖女』と呼ばれるあの高司祭さまなんて他所ではいえないが。
「だいたい、腕があっても仕事を取ってこなければおまんま食い上げじゃないか」
「チーアさんたちが言うと説得力ありますね」……おい。怒るぞ。
「だいたい、帰るにしても、手下どもに仕事を斡旋してあげないと帰るに帰れないじゃないですか」
20人以上いるしなぁ。ヤクザ稼業を何年もやっているのに堅気に戻れっていうのは難しい。
「ほう? 意外と殊勝なこったね? 他人の心配とは」「いやいや。普通でしょう」???
「首に縄つけてでも連れて帰るつもりだったんだけどねぇ? 」「げっ! かぁちゃん! 」
突如現れた老婆はニヤリと笑う。「神官様は冒険者だったんだねぇ? 」
はははは。顔が引きつる。まさかボコッたりボコられたりな間柄とかいえない。
キョロキョロと店内を見回す婆さん。その瞳が寂しそうになったのは気のせいだろうか。
「店主は誰だい? 」ん??
「えいどさんだよ~! 」ファルコが答える。
「へぇ。あのエロガキも偉くなったもんだ」知り合いか?
「エロガキ? 種熊だな」ロー・アースが気の利いたギャグを飛ばす。
「種馬っていうには見た目がアレだしなぁ……」俺は苦笑する。
「種芋だったらおいしいよね! 」芋頭は縁起物だしな。でも全然違うぞ。ファルコ。
「アンジェラさん……変なこといわんでください」
店の奥から現れた2メートル50センチの熊みたいな男は肩を落として泣きそうな顔をしていた。




