後編。プロローグ 夢を追う石。透明な心で
「好きな石なんです」
『孔雀石』はそういった。
「……凄く、綺麗だよ」
ファルコが『孔雀石』さんの足元でニッコリと微笑む。
決してダイヤにはなれない石。叶わぬ夢を追い、ゆえに夢追うものを護る石。希望石。か。
「あのね。ぼくね。妖精の世界をみてみたいの~」
ファルコがのんびりと発言する。
妖精族の世界は別世界らしいが、ファルコ自身も見たことがないらしい。
「私も興味ありますね。ドワーフの世界ってどうなんでしょう?」
『孔雀石』さんは苦笑する。
「きっと、暖かい世界さ」
寝転んで星を眺めながらロー・アースが呟いた。寝ているのだと思ってたぜ。
「ロー・アース。お前に夢とかねぇのか?」
少し興味を抱いて聴いてみるが。
「ないな。見る夢は悪夢だけ」つまんねぇ奴!!
「俺はさ、お袋と兄貴と親父とノンビリ暮らしてみてぇな。
お袋は何処行ったかわかんねぇし、兄貴は放浪癖だし」
色々話しかけてみるが、彼は生返事しか返さない。
「……変わったご家族ですね」
『孔雀石』さんはそういうが、誰一人死んでいないだけ幸福といえる。
「ぼくはみかたなの」
「?」「なにがですか?」「何だ?ファルコ?」
唐突に変な事をいうファルコにロー・アースを含めて三人とも注目するが。
「ひみつ~」
そういってファルコも寝転んで星を眺める。
なんじゃそれ。
「希望石は人を騙すためにあると私は思いません。
ダイヤモンドになりたいけどなれない。
……そんな偽者だからこそ。本物を。未来のダイヤモンドを護れるんですよ?」
『孔雀石』さんの意図がよくわからん。なんでそんな話を?
「……借金まみれの冒険者モドキと、皆さんは自分達のことを仰いましたよね?」
「ああ」「うん」「伯爵家の跡継ぎと冒険者の宿の陰謀だけどな」
『孔雀石』も「はしたないですが」といいつつ俺達と一緒に草の上に寝転がる。
俺達の目の前には満天の星空。
「……『夢を追う者達』になってみませんか?」
「「「……考えておく」」」」俺達はそう応えていた。
「ええ。考えておいてください。私達は偽者かもしれません」
そういって『孔雀石』は空に語りかける。
「でも。『夢を追う者』にはなれます。
希望石のような透明な心を持てば」
星がにじんで見えたのはたぶん風が目に染みたから。と、思う。




