3 女三人で『姦(かしま)しい』と読む
「ねぇねぇ。高司祭さまとどんなお話したの? 」
姦しいアンジェと不機嫌そうに睨むマリアの相手はかなり辛い。
大体、歳が近い以外俺らに共通点がない。
「別に。報告させられただけ」俺は答えると玉ねぎを切る。
「つまんな~い! 」男の噂もないから、てっきりそっちかととアンジェ。
「アンジェ。高司祭さまを侮辱するつもりですか? 」マリアがにこやかに微笑むが絶対怒っている。
「ねね。絶対高司祭さまってロー・アースさんにホの字だよね~! 」アンジェは結構鋭い。
というか、莫迦でもわかるかもしれない。
「何処が良いのだか」俺は呆れる。
「カッコいいじゃん! ニヒルだし」
そういう解釈があったか。やる気ないだけだと思う。
「訓練のときももっと怪我しないように戦えたと思いますよ? 」これはマリア。それはそうだが。
実際、彼はうちの神官から多少なりとも怪我させられているが、うちの神官側は怪我らしい怪我をしていない。
「優しく抱き上げて、『個々の技術は優れているが、隙が多い』とか♪ 」ゾクゾクしちゃう! とアンジェ。理解しがたい。
「『夢を追う者たち』の皆さんは恩人ですけど、そういうのは感じませんね」とはマリア。
でも、かっこいいと思いますよ? と続けるマリア。そーかなぁ。
「私も冒険者になろうかな! 」とアンジェ。
鍵あけとか罠の発見解除とかスリも出来るよ? と呟く。
それ、前職と関係あるのか??! 追求したら「客から教わった」そうな。頭が痛い。
「癒しの力を鍛えるにはいいかも知れませんね」とマリア。
彼女も俺やバドと同じく『五竜亭』で冒険者をやっている。
「でも、貞操の心配をしないといけませんよ? 」マリアが苦笑する。
結構彼女は苦労しているらしい(ローと妖精族は例外だ)。
血気盛んな男共と命がけの旅や生活を何日も過ごすことを思うと仕方ないわなぁ。
俺やアンジェと違って男好きする身体だし。
「一度に5人くらいなら大丈夫だと思うけどなぁ」「おい! (嫌です! )」
アンジェがとんでもないことを言うので、即座に俺達二人はツッコミを入れた。
「どっかにいい男いないかなぁ」アンジェがぼやく。
「チーアはお子様だし」……そういえばアンジェ、俺が女って知ってるのかな。
「もう女の子でもいいかも~!」マリアに迫るアンジェだが、凄い勢いで睨まれて立ち止まる。
「マリアって夢みたいにふわふわしてる感じがいいよねぇ」そりゃ……。
「はい!そこまでです!ご飯を持っていきますよ?!」マリアは話を強制的に打ち切った。
俺はグローガンとその母親の顔を思い出していた。
たまには親父の面でも見に行こうかな。




