1 発火
「で。どういうことよ? 」
俺は文句のひとつでもいいたいが、相手の親の手前、あまり余計なことは言えない。
「いやぁ。息子が真面目に仕事してるっていうから見物してたんだけど……。
なんていうか、役人どもが偉そうだからつい石なげて糞壷なげちまったよ」ケラケラと笑う老婆。
「本当にかんべんしてくれよ……肝を冷やしたよ」そりゃそうだろ。
つまり、いいとこ見せたいので役人から仕事うけたり、誘拐犯を捕まえようとしてたのか。
可愛いところがあるじゃないか。このハゲも。
「いやぁ。チーアさんも可愛いところありますよ~」手下の一人が謎の発言をする。
「そうそう。チーアは可愛い! 」アンジェも同意する。なぜか甘い息を俺の首筋にかけるのは辞めろ。
「久しぶりに袋のチーアさんをみましたよ! ちょっと懐かしいですよね! 」やめんか。早く出せ。
「昔はボコってたのに、今はボコられっぱなしとか、ちょっと興奮しますよね」別の部下も同意する。やめんか。
「そういう人が袋にはいって身動きできないとか、もうたまりませんね! 」アンジェも楽しそうだ。
……。
袋が俺の怒りで発火する。
「……お前ら。覚悟はいいか?」自由になった俺は皆を睨み付ける。
アンジェと部下達の笑みが凍った。




