前編 エピローグ また拉致か
「しかし仕事ないよなぁ」
俺は愚痴る。仕方ないので今週は三人とも慈愛神殿でボランティアだ。
くすくすと笑うマリア。「余計なオマケがつくという噂ですしね」うっさい。
「あ~。私も素敵な彼氏欲しいなぁ」愛らしい童顔と多少姦しいが気遣い上手な性格。
まだ未成熟ながら綺麗な体つきのアンジェなら。大丈夫だろう。うん。寂しいけど。
「アンジェ宛てに今日も恋文が届いていますよ? 」マリアがからかう。
「やだ~! ダサいのとか変態とかばっかじゃん!! "前職"の関係の人とかもっとヤダ」
そりゃそうだな。俺は苦笑した。
「ロー・アースさん! 付き合ってください! 」アンジェがからかうが、
「大人になったら考えてあげよう」とロー・アースはスルーした。
なんでこいつなんだよ。アンジェ……。いやがらせか。そうなのか。
「じゃ。ファルちゃん! 色々教えてあげるよ~? 気持ち良いよ~?! 」「ふにゅ? 」
「「「やめなさい」」」三人で突っ込む。
今日はゴミ収集と街の掃除。これは神殿の重要な収入源である。他国では糞尿の処理も引き受ける。
この国は下水道と上水道が完備されているので不要だが、不法建築ばかりのスラムではそれなりに需要がある。
若い娘が出いりする場所ではないが、皆腕っ節にも自信があるので問題ない。
(野郎どもばかりならクロスボウで撃たれるだろうが、若い娘ばかりなので、まぁそういうことだ)
集めた糞尿は以前はそのまま下水道送りだったが、昨今は買い取るという酔狂な学者がいるのでそちらに送っている。
「うんちまみれなんてやだ~やだ~」アンジェがうるさい。
「排泄も自然の営みですよ。アンジェ。これも女神様のご意思」マリアが優等生な発言をする。
「あ、でも石鹸もらえるのは嬉しい」そのためだけに参加しているアンジェには重要だ。
石鹸というのは何でも綺麗になる凄いものだ。糞尿やゴミ収集に参加すると分けてもらえる。
出所が『例の学者』なのがアレなのだが。
「石鹸もらって~♪お風呂はいって~♪ 幸せ~♪ 」わかったから早く糞壷運ぶの手伝え。
「慈愛神殿の皆様、ご奉仕ありがとうございます」スラムの老人たちに手を振る俺達。
スラムは路地ばかりで、壷をもって歩くのは極めて難しい。足元は既にウンコだらけだ。
この路地からさらわれる若い娘はあとを絶たないが、慈愛神殿の関係者はあまり被害に遭わない。
まぁ、そういうことがおきたら炊き出しに支障が出るが。
支障が出る。うん。
ましてや男か女か判らん奴の口ふさいで袋に入れる馬鹿とかいないだろ。
いないだろ。普通。
いたのだから困る。




