4 俺と聖騎士
衛視に地主に雇われたヤクザ者に正義神殿の聖騎士まで出てきて大騒ぎな現場。
誰かが石を衛視に投げ、騒然とするさわぎになった。怒りに燃える男が石を投げた婆さんに剣を。振り上げた。
「!」
俺は駆け出したが、間に合わない!
間一髪。
剣を振り上げた正義神殿の騎士の両足に一瞬で駆け寄ったファルコがカニハサミと言う足技を仕掛けて転ばせた。
狭い路地は糞壷から撒かれたウンコだらけだ。ご愁傷様である。ファルコには後で浄水の魔法をかけておかねば。
「正義の神の使途が、力なき民草に剣を向けるというのか! 斬るなら俺を斬れ! 」
両手を広げて間に入る。ちょっと怖い。昔ほど無謀でも優しくもなくなった証拠なんだろう。
「ん? 貴様? 」「ありゃ???! 」
バイザーをあげた騎士の顔をみて俺は眼を見張る。
知り合いだ。同じ『五竜亭』に出入りする冒険者でバドと言う。
「去れ。慈愛の女神の使途よ」「ふざけんな! バドのハゲ! カッパ! ボケ! 」
なにやってるんだよ。莫迦。
ちなみに「カッパ」というのは東方の水神の一族である。らしい。
彼の頭の上は丸く剃ってあることへの皮肉だったが。
「天罰」
おいっ!!
情け容赦なく剣が振り上げられる。俺は眼を閉じた。
「……」あれ? 斬られていない。
「ふああああ。手打ち手打ち」いつの間にか割り込んだロー・アースが
振り上げたきったバドの剣の柄頭に手を添えて剣を止めていた。いつも思うが器用な技だ。
本来なら逆の手に握った短剣で止めを刺すか、手首を返して投げ飛ばす。
「ロー・アースか」「俺がキュートなウサギさんに見えるか? 」
冗談だか。余裕なのか。それとも虚勢か。時々俺はコイツがわからなくなる。
「いや、助かった」剣を納めるバド。
「とりあえず、地主さんが帰ってきてるんだし、お前ら退去」ロー・アースが住民に言う。
「そ、そうだ! 出て行け出て行け! 」地主さんとグローガン一味が叫ぶ。
わずかな手荷物をもって退去していく住民達。あとはグローガン達が廃屋を壊していく。
「あああ。俺達の家が……」「酷い……」「おかぁちゃん……おうちが……」
耳が痛いが仕方ない。そして火が放たれた。




