2 ジャイアントスイング ジャイアントスイング by 慈愛の女神様
「ね。ね。よかったのかなぁ? 」てくてくと歩く俺達。足元のファルコが言った。
「助ける必要がまったくないだろうが」俺は呆れた。
親にいい格好したいからボコられてくれだの、身長のばせだの、
幸運神殿の富クジの一等に当たりたいだの、
慈愛の女神様だってニッコリ怒ってジャイアントスイングかますだろう。
そういうとファルコは「もきゅ」と呟いて右左に走る。何をしている。
「ま~しかたないさぁ」
ロー・アースは相変わらず気力のない喋り方で空を仰いだ。
「いい天気だな」いつもの厚い雲は何処へやら。老いも若きも富も貧しきも皆外に出て、
仕事ほっぽり出して日光浴。典型的な冬の晴れの一日である。
「ねね。こんなに晴れていたら、露店とか出てるかな」
普通は晴れの日と言えば王国に神殿共々臨時祝日だが、仕事熱心で遊ぶのが苦手なヤツならそうかも。
「様子見に行くか」
俺がそう呟くとファルコは嬉しそうににぱっと表情を輝かせて右左にコロコロ。何をしている。
自分で払えよ。奢らせるなよ。
「む? 」「どうした? 」
ロー・アースは人間にしては五感が鋭いが、それだって半妖精やファルコほどではない。
ファルコは幼児に見えるが立派な妖精族だ。要するに成人している。
「なんか、修羅場っぽい」「構うな」
どこからか怒鳴りあう声が聴こえてきた。
「いくののっ 」「おい? 」
コロコロ転がるように走るファルコ。右左にぶれるように走る。ちゃんと走れ。俺達はそちら側にむかった。
「お願いします! 俺達の家を焼かないで! 」
「許可なく勝手に建物を建てたり、既存の建物を行政の許可なく占拠するのは違法である!
住民は10日以内に退去せよ! これは伝染病を防ぐため必要なことなのだ!!! 」
衛視と役人、スラムの住民が揉めているらしい。
「またか」「最近多いね」「つか、本当にスラムを焼き払うだけで伝染病防げるのかよ? 」
ロー・アース、ファルコ、そして俺と三者三様でげんなりとする。
他国では例がないがなぜか車輪の王国だけはスラムを定期的に破壊、
焼き払うだけで大幅に発生そのものを抑えることが出来るという無茶苦茶な話がまかり通っている。
ちなみに、他国では焼き払いの劇的な効果は確認されていない。愚策である。
「さっさとでていけ! お上に逆らうな!! 」……ん??
「オラオラオラ!! 爺! 婆! さっさと出るんだよ! 」え~っと…。
「あ。ぐろーがんのおっちゃんたちだ」あ~~~~。またか。「行こうか。ロー・アース」
慈愛の女神様はこの状況を見逃すなとおっしゃるかも知れんが、余計なトラブルは避けたい!
「ボコられにいくのか。いってらっしゃーい♪ 」ロー・アースは俺の背中を押した。
いや、いくらなんでもこれ以上あいつらには関わりたくはない!!!




