1 故郷を出でて。
「俺も15の頃にはビッグになってやろうと『車輪の王国』の王都を目指した口なんだよ! 」
グローガンが叫ぶ。大声がデフォルトになっているため、こいつはとにかくやかましい。
ダン! 強烈な勢いでジョッキをテーブルに叩きつけるアキ。
「これはサービスですので」飲んだらとっとと出て行け。である。
「ビッグになるつもりで豚になったのか」ロー・アースは痛烈な皮肉を放つ。
「そしてそれから20年たったと」アキは冷たい目で彼をにらむ。
大男はがっくりと肩を落とした。月日は残酷だが、正直俺達だって彼を笑える立場ではない。
「俺もそうだ」「俺は職人になろうとしたけど親方と喧嘩してさぁ」
「俺も商家に奉公にでたけど銭に手をだして賭け事してたらバレてしまったぜ」「お前もか」
「俺は職もなくブラブラしてたらみんな馬鹿にしやがるからグローガンさんの手下に」
「俺も俺も」「俺もグローガンさんと同じく冒険者になろうと思ったけど血は駄目だったわ」
「俺も衛視試験落ちて、傭兵になろうと思ったけど駄目だったわ~」
「どっか行こうぜ」
相手する気力がなくなった俺は二人に言った。
奴らが出て行かないなら俺達が出て行くしかない。
つか、人のこといえないが駄目人間の集まりじゃないかっ!!
席を立とうとする俺達に更に食い下がるグローガン達。真面目に迷惑だから辞めて欲しい。
「他に言うこととかやることあるだろうが! 」俺は悪態をついたが、彼らは了承と受け取ったらしい。
「俺も喧嘩強いって見返したい」「身長をあと5センチ伸ばしたい」
「あ、俺は仕事欲しい」「あ、俺は彼女欲しいな」「あ、俺も」
「幸運神殿の富クジ一等当選したい」「俺は子牛を丸ごと豪華に食いたい」「俺は豚の丸焼きを」
「俺は綺麗な嫁さんもらって、ゆくゆくは孫3人に囲まれて豪華な農園の真ん中の家で余生を」
「「「無茶苦茶言うなぁああああああああああああああ!!!!!!!! 」」」
俺達三人は一斉に怒鳴りつけた。




