2 大変です。ロー・アースさん
予約投稿文を直接投稿してしまったようです。
「大変です。ロー・アースさん」
息せき駆け込んできたのは長身と言うには少々背が高すぎるが、それを補って余りあるほどの美しさを持つ。
男だった。
繰り返す。男だった。
最近美女ばかりに遭遇するので飽きてきた。
男というだけで運命の神に評価を贈りたい。
なに? 俺が若い女を見るたびに美女と思うくらい女に飢えているのだろうって?
残念だな。俺は女だ。確かに男の格好をしているがな。
昨今は仲間や知り合いにまで女である事実がばれているが、
意地でもスカートなんか穿かないつもりだ。たまに穿いているけど。
「アスラが何か」
やる気がなさそうなこの青年。ロー・アースは俺たちのリーダーってことになっている。
アスラと言うのは。
「あすらくんがどったの」小首を傾げてみせる薄く輝く栗色の髪の幼児。
ともすれば即座に抱きしめたくなるほどの愛らしさだが、コイツは恐ろしいほどの身体能力と戦闘能力を持っている。
「ファルコさん。大変です。アスラがいなくなりました」「もみゅ」
その報告を聞いて幼児の姿をした妖精族はコロコロと地面に転がって見せた。何をしている。
ファルコ。ファルコ・ミスリル。見た目は幼児だがその実力は計り知れない。度胸も実はある。
「子守の次は赤ん坊探しか」「ええ」
この長身の美青年は実は人間ではない。『神』と呼ばれる一族、『上位巨人族』の一人である。
以前、狂気に犯された彼の同族が様々な古代種族の『生命の樹』の情報を参照に一人の上位巨人族の赤子の姿をした魔物を生み出したことがある。
その一件は色々あって解決したが、その後は『ただの人間』になった赤子が残った。
サイズ的な問題で赤子が上位巨人族の社会で暮らせるまでは、時々俺たちが子守することになっている。
なんでヤクザ者が子守なぞと思った方は冒頭をもう一度参照してほしい。普通の子守じゃ死人が出る。
どうも、赤子。改めアスラは当時の怪力はそのままに、サイズだけ縮んでしまったらしい。
ただでさえ赤ん坊の世話は手がかかる。その上怪力となると。
「宿屋の壁をハイハイして登ってる」「見ましたが違います」
「魔法で探せないのか」「あの子は私達の魔法でも」厄介だなぁ。
ファルコも口を挟む。「あのね。あのね。ころころ転がって何処かに」
普通の赤ん坊なら段差に落ちたとかで大騒ぎだが、あの子は段差なんて関係ない。
コロコロ転がりつつ、階段すら昇っていく。
そもそも垂直の壁を素手でハイハイする。信じられない。
「最近、ちょっとは立てるようになってきたからな」
無関心そうなロー・アースだが、最近コイツが焦っている仕草が分かってきた。ちょっと可愛いかもしれない。
「人攫いに浚われた。とか」
俺は顔を青ざめながら呟くと、上位巨人族・『あかるきおおぞら』は「なんと恐ろしい」と呟いたが。
俺は。お前等『神』の一族とアスラのほうが怖いぞ。マジで。この神様、時々ボケるからなぁ。
「あれだな。人攫いは今頃」「どうなっているか分からないの」
赤ん坊と思ったら鉄の棒を易々と曲げる子供でしたとか、悪党共には受難にも程がある。
ん? 悪党。
「そーいえば、最近グローガン達をみてないな」知り合いのヤクザ者どもだが。
「あ」「だねぇ」「そういえば私も見ていませんね。あの方には私も『まぼろしのもり』も」
『まぼろしのもり』は上位巨人族と同じく神とされる一族・エルフの魔導士だ。顔は見たこと無いけど知り合いだ。
カラン。
酒場の扉が開いた。
「おお。部下A」噂をすれば影。グローガンの手下その一だ。
「部下Aってなんすかっ?! チーアさんッ?! 」彼の相手は程ほどに。
息堰き駆け込んできた彼は叫んだ。
「大変っす! アスラ君が浚われました」




