1 どうしてこうなった
俺たちに見知らぬ男から声がかかる。
『あなたたちが最近頭角を現してきた「夢を追う者達』……失礼しました」
おいっ? 依頼人ッ?! 逃げるなッ?! 仕事ッ!? 仕事ッ?!
まぁ。萎縮しても致し方ない。
愛らしい赤ん坊を抱いたヤクザモノという異常な空気はそれだけで近寄りがたい。
しかし、この赤ん坊が厄介なのだ。理由は後述するが。
「だぁだぁ。ふぁ~ふぁ~」
ファルコに抱きついてご機嫌のアスラ。
ニコニコ笑うファルコだが、彼の骨がバキボキと悲鳴を上げている。
ファルコはグラスランナーという幼児の姿をした妖精族だ。
見た目に反して恐ろしく頑丈にできているので骨がかろうじて耐えているが、おれなら全身骨折だ。
「ほら、アスラ。こっちだ」
アスラをひょいっと支えるようにうしろから抱き上げると、ファルコはニコニコ笑いながら気絶していた。無理もない。
「きゃははは♪ ちー♪ ちー♪」
手を振ってご満悦のアスラ。その手がおれの頬を「ぺちぺち」とたたいた。
ぶっ飛んだ俺はなんとかアスラを落とさないように全身で守りつつ、店の床に後頭部をぶつけて悶絶。
「ろ♪ ろ♪ 」てけてけと這いずるアスラはロー・アースをロックオン。
ゆらゆらと立ち上がる。「あぶないぞ。アスラ」思わず近づいたロー・アースに全力で抱きつく。
脚にぶちかましを食らったロー・アースは半回転して店の壁にぶつかって気絶した。
昨今売出し中の期待の冒険者集団・『夢を追う者達』は、一人の赤ん坊の前に全滅した。
この赤ん坊、アスラはとんでもない怪力なのである。




