第十八夢。赤ちゃんは悪党がお好き?! プロローグ
「ねぇ。チーア。チーアったら」「うっさいな。黙れアキ」
おれは後ろから声をかけてきたこの店のウェイトレスに仏頂面を向けてやった。
「あ~ん。チーアがいじめる~」うっせ。バカ。
先日の依頼。一言で言うととんでもなかった。
今度の依頼は凄いの! とアキは興奮の色を隠さない。
先日陰鬱な依頼を受けてしまった俺たちにとって、いい仕事はそれだけでいいニュースだ。
アキ曰く、剣で切った張ったする必要はほとんど無い。らしいし。
「あのね。貴腐がいっぱいもらえるの」
その言葉を聴いておれたちは一斉に立ち上がった。
俺、幼児を。もとい用事を思い出した。俺とロー・アースはそう告げると、店の外を目指す。
「そ、それだけじゃないわよ?! 毛並みのいい羊や美味しいミルクを出すヤギもつけるって」
ファルコは「急用をおもいだしたのの」といってテーブルの下に隠れた。
「こ、高額で買い取りますよっ?! 」なぜか今更敬語のアキをロー・アースが半眼でにらむ。
「お前が勝手に世話しろ」「無理よっ?! 」
「ロー・アースさん」その様子を黙って見ていた女将のアーリィはうるうるとした瞳でロー・アースを見る。
ともすれば一発で篭絡されかねない愛らしさだが、ロー・アースには通じない。
「お願い」めっちゃかわいい。でも通じない。「ね? 」通じない。
「……」「謹んでお受けします」エイドもびびる眼力マジすげえ。「もう、いいよ」
おれたちはテーブルに突っ伏して一言つぶやいた。「『アスラ』の世話だな」「うんっ! 」
そういうわけで、おれたちはいまだアスラと一緒にいる。




