エピローグ 幽霊は退治しました。キリッ!
「当主様。幽霊は退治しました」俺は自信を持って当主様に報告した。
「父上。この四人の活躍は著しく」跡継ぎ様はソラソラと大嘘を言い続ける。
正直、頭にもやがかかっててほとんど覚えていないのだが。
「もう、幽霊が出ることはないでしょう」「私も自信をもって店主に報告できます」「なのの」
三人とも。冷や汗出ているぞ。そんな俺たちに当主様は叫んだ。
「大火事出してよく言うなっ!!!!!!!!!! 」
オマケに、延焼後を正義神殿に押さえられ、出るわ出るわの不正の痕跡。
麻薬に脱税、酒の大規模な密造。新型武器の製造。まぁよくここまで悪事を重ねたもんだ。
そーいえば、明らかに暴行と思しき『怪我人』も診たしなぁ。
ロー・アースたちに言わせれば、『高貴なる目的の為の行動』らしいが。マジ理解不能。
ずるずると正義神殿の聖騎士達にしょっぴかれていく当主様を見送り、俺たち五人は苦笑い。
「父の不始末を解決できず、レイハを失い、君たちにまで迷惑をかけてしまったな」
ああ。大迷惑だったけど。正直家が焼かれたほうがキツイだろ。そういうと彼は大笑いした。
「誰も怪我していない。流石『夢を追う者達』。実に丁寧至極に狼藉してくれたものだ」ワザとじゃないぞ。マジで。
「この、バカの所為で」
ロー・アースが軽く俺の頭を小突き、ファルコが俺の脛を軽く蹴った。
アキ。何故俺の背中に抱きついて頬ずりしている。女とばれているのに。まさか、両方イケるのか。
ロー・アースとアキに胸を見られた。
絶対見せたくないと思ってたらばれていた。この半年以上の苦労はなんだったのだろう。
アキは最近気がついたらしい。情報源は多分知り合いの盗賊だ。あとで酷い目にあわせる。
ぼっちゃんは自分から告発したことになっていて、追求を逃れたが、当主様は正義神殿にしょっぴかれた。
正直、下手したら俺達まで捕まっていた。やばかった。
「なぁ。『お仕置き』ってさ」「そういう。考えもあるってことさ」
そういってロー・アースは俺の頭を子供のように撫でた。なんか。ムカつく。
「僕も撫でて」ファルコが言うので俺とロー・アースは彼の頭を撫でる。ちょっとだけ気分が良くなった。
そう。人をモノとしてしか考えられない人間もいれば。
人間じゃないモノを仲間として、人として。恋人として尊重する者も。いるのだ。
てくてくと俺たちは歩く。
「幽霊って言うほど怖く無いな」ちょっとだけ。暖かくて。悲しくて。冷たかった。
「人間の心のほうが怖いもんさ」「そういうことね」「なのの」
なんとなく。納得できた。俺、半分人間じゃないけどな。
街を抜け、郊外の森を歩く。視界が開けて煙を吐き出す奇妙な形の宿が見えた。
遠くから宿の店主たちが腕を振ってくれる。邪眼もちの盗賊の姿をみた俺はほくそ笑む。
レッドよ。今夜のお前のメシには新種のスパイスをぶち込んでやるぜ。
最近、コックが板についてきた。そろそろ女将の免許皆伝である。
クククと微笑む俺を見て、三人は露骨に怖いものを見る目を俺に向けた。
もし、君が叶わぬ思いを抱いていたら。
もし、君の涙が止まらぬ日があるなら。
もし、誰かの助けが欲しいことがあれば。
迷わず、『俺たち』を指名して欲しい。
ひょっとしたら、ささやかでも助けになるかもしれないから。
ただし、結局の解決はあなた御自身の仕事になるのだが。
(Fin)




