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男装女神は14歳っ!?~夢を追う者達(ドリームチェイサーズ)冒険譚~  作者: 鴉野 兄貴
影絵の美女に花束を

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11 業火

 「カエセッ! カエセッ! 」『私』は叫んだ。

「"私"の身体を返してッ "私"の綺麗な身体をッ 心をッ」

捕らえた娘の体は炎を呼び出す力を持っていた。


 「チーア。落ち着け」「チーアッ?! 」

忌々しい魔導士の力を持つ剣士と、幸運を呼ぶ妖精が"私"に立ちはだかる。

赤い服の娘が叫ぶ。「チーア。しっかりしなさいっ?! 」


 「感受性の強い子供は取り憑かれることが多い」そういって剣士が二本の剣を持つ。

面白い。やってみろ。この娘は死ぬぞ。


 胸元を小さくさらけ出してみせる。

「どうした? 剣士ッ 」こないなら、こちらから行くぞ。


 業火を呼び出し、疾風を走らせる。

土くれが赤い服の娘を捕らえ、水と氷の刃が妖精に向かう。


 「何で普段弱いのに敵に回ったら強いんだよッ?! 」

一瞬、腹が立ったのは恐らくこの身体の持ち主の強い意志だろう。


 「ちゃんと炎使えてるののの」

ちょこまかと動く幸運と悪運の妖精は易々と"私"の攻撃をかわし続ける。



 「やめろ。レイハッ! 」……ぼっちゃん。"私"も。あなたが好きだった。

「ぼっちゃん。あんた幽霊が『憑依した相手の魔法能力を使える』事を知ってたかしら」「ああ」

赤い服を着た娘の言葉に頷くあの人。


 穢れた"私"に身体を貸してくれた。だいじなひと。

もっと、もっと早く、あなたと一緒になれたらよかったのに。

"私"は彼の力で綺麗な"私"になって。二人で屋敷を駆け回った。楽しかった。楽しかった。


 「ぼっちゃん」「レイハ。名前で呼べ」

ふふ。私。やっぱりあなたと同じにはなれないみたい。

全てが。憎いの。憎いの。愛している貴方も。あの男の息子であるから。愛している故に。憎い。


 『絵』に力を入れる。

バキバキと音を立てて、私の『自画像』が実体化する。

最後の作品は。私が描きあげた。綺麗な身体。貴方の為に書いた。身体。


 「私。綺麗だったかしら」「ああ」

ごめんなさい。今の私、醜い魔物だから。


 「さようなら」

私の『身体』は油をたっぷり含んだ絵の具。

私は『彼女』の発火能力を使って、私の『最後の作品』に火をつける。


 『メメント・モーリ』

死を忘れて。いたわけではない。

死ぬ前に。言いたいことがあったのに。


 「ホントは。好きだったの」「ああ」

メラメラと燃える私の視界に、涙を浮かべている黒髪の少女の姿が見えた。


 「俺は、お前だけいればよかったんだ」

彼はそういってくれた。その言葉。その態度。ホント、憎らしい。

今更そんなことに気がついたのね。ばかね。本当に。ばか。

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