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男装女神は14歳っ!?~夢を追う者達(ドリームチェイサーズ)冒険譚~  作者: 鴉野 兄貴
影絵の美女に花束を

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9 幽霊「無実です」

 周囲をキョロキョロ見回す俺。なんせ早朝だ。下女仲間の中には朝早くからおきているヤツもいる。

この家の下男下女の業務は朝の8つの鐘から夕方の5つの鐘となっているが、住み込みの下女はその限りではない。

というか、24時間フルタイムで御当主様にお仕えするもんだしなぁ。


 慎重に精霊を使って周囲を探り、素早く服を脱ぐ。

「うっひゃぁぁっっ さむいっ 」冬場に全裸になるのはいただけないが服や下着の具合がなんとも。


 『浄水』

どんな汚れた水でも綺麗になる魔法だが、別に水がなくても服の汚れを取るために使える。洗濯板いらずで頼りになる。


 『乾燥』

手で押さえ、パタパタと揺れる下着。地味に絹や木綿で出来ていて魔法以外で洗濯するのは難しい。

冒険者専用の着心地が良い代物で製法は秘伝である。


 そして。

「いやだなぁ」

下手すれば心臓麻痺確実だし、身体や服を綺麗にするだけなら自分に『浄水』を行うだけでいいのだが。

その。あれだ。察してくれ。こうでもしないと気持ちわるいんだ。


 釣瓶を引き上げて水桶で頭から水を被る。……。

「うっぎゃああああああああ」あまりの冷たさに一瞬思考停止していた。絶対死ぬ。


 『火霊』

ブチキレルと勝手に発火するので火霊の扱いには注意してしまう。

「あ~あったけぇあったけぇ」俺に焚き火代わりにされ、火霊は嫌そうにしている。


 本来ならば風呂はある。

七つの鐘か八つの鐘までに下女長がお湯を用意してくれることがあり、そういう時は風呂の時間になる。

他家の人間が出入りする手前、下女共が悪臭を放つのは良くないという配慮である。

とはいえ。『女装している』俺がファルコのように皆と一緒に風呂にはいるわけにも行かず。

(別に構わないわよと『シモ担当』の下女の皆さんに言われたが全力回避した)

余った魔力で自分に『浄水』をかけたりしてなんとかしのいでいる。


 「まだ誰も来ないかな? 」火霊に周囲を探らせ、ニヤリと笑う。

「よいしょ。こりゃしょ」大きめのタライを一つ失敬してきた。早く返却しないと下女長に叱られるが。


 「お湯になれ~」

火霊。嫌そうにするな。水霊。その目は辞めろ。

火霊の一族にとって水や氷の一族は天敵である。


 徐々に昇る陽光の元、タライに張ったお湯に腰まで浸かって身体に何度もお湯をかける。至福のひと時である。

ちなみに、この湯は冬の寒風を受けても火霊の加護で冷たくならない。

この屋敷はかなり広く、庭師もいい仕事をしているので井戸周囲は意外と絶景だ。


 「月の光♪ 星の海♪ 永久に煌く愛の歌♪ 」鼻歌が漏れてしまう。

「天の輝き地の恵み♪ 私の言葉は穂を揺らし♪ 」陽光が昇っていく。

井戸周囲は生垣の迷宮になっているし、知らない人間に覗かれる心配は無い。

冬でも枯れない草木が生き生きと陽光を受けて輝く。


 「揺れる穂にわが心♪ ……ッ 」

『警戒』に引っかかった。急いでタライを片付けて服を身にまとう。


 『姿隠し』

自分でも忘れているが、使えるのである。タライもコレでパクッた。

精神集中が途切れなければ手に持っている物や身につけた服も消えてくれる。


 「美しい歌声が聞こえたのだが」

姿を現した男を見て、俺は危うく姿を現してしまいそうになった。


 「(当主様じゃねぇか)」

豪奢な衣装にガタイのいい体つき。剣士というのは嘘ではないらしい。

彼はキョロキョロと井戸周りを捜索していたが。


 「ふむ。誰かが先ほどまでいたのは間違いないようだが」

いません。いません。隠れてます。さっさとどっかいけ。タライが消えたと下女長に下女たちがキレられてしまうじゃないか。

流石に消えているとはいえ、タライをもったままコソコソ逃げるのは無理がある。


 「あの絵師……まさかな。今の唄は女神の声のようだった」

おっさんに褒められても嬉しくない。きょろきょろするおっさんは周囲に水が飛び散っているのに簡単に気がついたようだ。


 「女神殿は身を清めていたのか」

湯気を放つタライはあっさり発見された。まぁ魔法かけていたしなぁ。

「近くにいるかね? 」いません。どっかいけ。おっさん。


 「お前の汚れた身体をもっと綺麗にしてやるぞ」は?

「私に抱かれるのは、悪く無いぞ」舐めんなボケ。


 「何処に隠れたかな。美声の女神よ」女神さまに不遜な台詞吐くな。天罰下すぞ。

「ここは寒い。私と温まろうか」このエロ親父。死ね。


 俺は隙を見て、タライを風霊に持ち上げさせ。おっさんの頭の上にもっていかせる。

そして。お も い っ き り 落 と し た 。


 豪快な音を立てておっさんは倒れた。

これは、幽霊の仕業にしておこう。俺は知らない。

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