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男装女神は14歳っ!?~夢を追う者達(ドリームチェイサーズ)冒険譚~  作者: 鴉野 兄貴
影絵の美女に花束を

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7 夢にまで見たあなた

 次。俺は厭々呟く。そりゃ幽霊は出ないけどさ。

ずらずらと幽鬼のように列を作って待つ屋敷の使用人たち。どうしてこうなった。


 「名に知れた慈愛神殿の神官様とは」「ありがたいありがたい」

肩こりをつい治してしまったらズラズラきやがって。


 「ええと、お屋敷に入れるわけにはいけないので、外に家族を」おいっ。

そりゃジェシカも収容数が足りなくなると断るわ。きりが無い。


 「俺、仕事と関係ない下女のバイト終わった後なんだけど」

ついでに言うといざ幽霊が出たときに魔力切れで闘えないとか笑えない。

「そこをなんとか」「おたのみします」おいいいいいいいいい。


 「母さん呼ぶからそこは手伝ってあげたら」助け舟だか泥舟だかわからんことを言うアキ。

アキの母、メイは腕のいい薬草師まじょだ。見た目は若いが娘の年齢を見ればなんとやら。


 「鉱毒騒ぎ、結核騒ぎ、麻薬撲滅に暗殺者を撃退。実績は充分でしょ」あのな。アキ。

「お母さんも治してくれたし♪ 」あれは偶然だ。本人の体力気力も重要だし。


 「にしたって多いぞっ 」「うふふ」

アキを看護婦代わりにして、一日の仕事が終われば医者の真似事。

この家には医者や神官はいるにはいるが、当主様一族の専属である。


 「バカヤロウ。爺が肩凝るのは当たり前だ。魔法なんか使えるか」「そこをなんとか。チーアちゃん」最近辛いのよと爺さん。

「もっと重病人がいるんだ。魔法は一日一回か二回が限度だ。この薬でも飲んでおけ」

肩に塗る薬をしみこませた清潔な布と一緒に渡す。布は地味に高いので痛い出費だ。


 「おい。爺さん」「いやぁ私も腰が痛くてな」

この家の専属医だった。どうなっている。どうなっている。


 「おい。チーア」「なんだ? 」

仕事が終わり、幽霊相手の警備はファルコとロー・アースに任せてぶっ倒れるように眠り、朝が来るとカチカチのパンを水で喉に押し込みながら下女仲間と食事を行う。


 そこにロー・アースがやってきたのだが。

「ロー・アースさんッ 」「キャー」「えっ えっ 聞いて無いわよチーアちゃん」大人気だな。ロー・アース。

ちなみにファルコは俺と一緒に寝泊りしている。女装させられているし。


 「お前、美少女が傷や肩こりや腰痛や病気を治してくれるって評判になって、勝手なことしやがってと依頼人がブチ切れているぞ」正直。すまんかった。

どうも下男下女やその家族のみに留まらず、その友人関係にも話が伝わってたらしい。どうりでキリが無いわけだ。


侍従長による厳重注意が行われ、俺たちはこの屋敷で公式に『冒険者』と言うことになった。

ただし、幽霊退治までに期限を設けられた。一週間で幽霊騒ぎを片づけないと罰金らしい。

侍従長よ。勝手に人を下男下女として扱っておいていい態度だな。


 「どうしてこうなる」「まぁそういうもんだろ」「もみゅ」

落ち込む俺たち三人を見ながら、アキは楽しそうに口笛を吹いていた。



 その日。

「チーアと言う医者がいると聞いたのだが」

「俺は狩人の子供で、医者かどうかはちょっと自信がない」

その貴公子に俺は応えるが。


 「キミの実績を知って、医者じゃないといえるなら、そいつの頭は既に医者が必要だな。

いや、医者でも莫迦は治せないか」一時的なら治せるぞ。そのかわり恐ろしく疲れるけど。


 で。俺はぼやいた。

「跡取り息子様が下賎な医者もどきに何の御用事でしょうか」「レイハのことだ」

レイハっていうのは件の絵師の名前らしい。珍しい名前だが。


 下女が寝泊りする薄汚いベッドだらけの部屋から出た俺と跡取り息子様は連れ立って歩き出す。

「レイハ本人が『化けて出ている』可能性はあるのかね」「どうでしょう。その可能性は否定しませんが」

実体化能力を持つ幽霊は可也高位のバケモノと化していて、俺たちが手を出せるレベルではない。


 あちこちに品のよい調度品が飾られた屋敷の中を歩く俺たち。

ちなみに俺は下女の服装をやっと脱ぐことが出来たので、いつもの兄貴の黒服である。


 「私を疑っているかね」「すこしは」

なんせ、この坊ちゃんだけが『化けられる』相手だ。


 「キミを『知って』も良いかね」「野郎を犯す趣味があるんですかい」

苦笑いして見せると彼もまた苦笑してみせた。


 「そういう言葉は同格の身分に対して言うものだよ。不遜な冒険者」「俺たち(冒険者)は『始まりの剣士』の末裔でして、そういうのは関係ありません」

なんせ貴族(魔導士)を廃したのが『始まりの剣士』だしな。


 「あの娘も同じ事を言っていたよ」「へぇ」

まぁ没落騎士の娘だったというなら、ありえる話だ。


 ファルコじゃないが階段の踊り場にて手すりに座ってみせる俺に彼はまた苦笑。

「奔放だな。子供のようだ」未成年だしな。


 「私は、彼女を『知らない』。これだけは間違いが無い」へぇ。

「どうしてです」「惚れた弱み。かな」彼は自嘲してみせた。


 ニヤニヤと笑う俺を見て顔を赤らめる彼。

「だから、時々彼女が夢に出てくるのが嬉しいのだ。今でも時々夢見る。

そして私たちは一つになって共に屋敷の中で笑いながら朝まで過ごすのだ」

女性になったような。不思議な夢をみるらしい。


ん? ちょっと待て。


 「ぼっちゃん」「アンリと言え」

「申し訳ありませんが、朝までアンリぼっちゃんを見張ってて宜しいですか」

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