2 なんでお前がついてくる
「で。なんでお前らのお遊びに俺が付き合わなければならないんだ」
しらけた視線を飛ばすロー・アースにまとわりつく4人の幼児。ただし、中身は伴わない。
結構この酒場は清潔に内部を掃除しているが、だからといって床に座っていいものでも無い。
「いいでしょ! いいでしょ! 」「え~」「ね♪ ね♪ お・ね・が・い♪ 」
「別にいいじゃん。女連れて行けばおっぱい祭りだぜ。ロー・アース」
一番最後に余計な事を言ったヤツ。
この宿の息子のイーグルは「ロー・アースの彼女の高司祭、お袋の次にデカイし」と慈愛神殿の人間が聞いたら怒りそうなことを平気で言う。
確かにアレはデカイ。二人ともあの細身にどうやって搭載しているのか疑問だ。
きっと胸から外れてぶっ飛んで爆発する魔法の飛び道具になるに違いない。
高司祭さまに思いを馳せていると視線に気がついた。
「チーアネェちゃんのはマッタイラだからなぁ。連れて行ってもツマンネ~だろうし」
どうやら俺を怒らせたいみたいだな。イーグル。
ざわざわと騒ぎ唄い踊る冒険者どもの中。
「イーグル」
マリアも静かに切れている。こいつはショタ好みなのだ。
「あ。マリねぇのは流石にロー・アースの彼女より小さいけど充分すぎるほどでかいし。いいんでね。
運動不足でちと垂れているけどなぁ。あと甘いの食いすぎで腹がゆるめだし」
口元が微笑みの形のまま、マリアの目元が凍った。
「え~ん! 」
間違えてぶん殴られたファルコ(の、はず)をあやしつつ、
気絶したイーグルを張り付いた笑顔のままゲシゲシ踏んでいるマリアを無視。
そのままファルコを抱いたまま離脱にかかる俺。後ろからロー・アースがついてきた。
「まったく。余計な依頼を勝手に請けやがって」「だなぁ」
「ほら、いい加減泣き辞め」と彼はファルコに言うと、俺の代わりにファルコをおぶう。
「ぐずっ。ぐずっ。練習したのにぃ~」あの動きは結構練習した上での余興だったらしい。
そんなファルコにロー・アースは苦笑し。「ほら、オヤツだ」「わぁい! 」
ドライレーズンをしゃぶりながらはしゃぐファルコを担ぎつつ、俺達は依頼人の元に向かう。
まぁ仕事が無いのだから犯罪以外何でも請けるのが駆け出し冒険者というものだ。
郊外の森の中は清潔で人の手が程よく入っていて歩きやすい。
俺たち『四人』はその中を歩く。
「で。チーアはなんでオバケが嫌いなの? 」
俺の隣をニヤニヤ笑う娘が歩く。俺やロー・アースと同じ黒髪黒目だが人間。
彼女は、五竜亭のウェイトレスでアキ・スカラー。
「うっせぇ。人間だれだって苦手がある」てか、お前らなんで平気なんだよ。
「ぷっ! 」??? 「お前、半妖精だろ」半分は人間だ。
「黒髪黒目の半妖精は神の子♪ 」アキ。お前其の話したら口聞かないって言わなかったか?
はぁ。
「コイツらの所為」俺は相棒二人を指差した。
「??? 」「??? 」「??? 」
精霊使いは意図して『見よう』とすると普段見えないものが『見える』し『聴こえ』る。
俺の目にはロー・アースをうじゃうじゃと取り囲む悪霊魑魅魍魎、
「能力がなさすぎて滑る~」といわれているファルコ。
「コイツは取り付きやすそうだ」と俺にまで迫る『連中』が映っていた。
そりゃそうとアキ。なんでお前、ついて来てるんだ。
ちなみに、コイツもお気楽能天気タイプで魑魅魍魎が取り付きにくい。つまり其の手の能力が無い。
「今日は非番だもん♪ 」そんな理由でついてくるな。
俺たちは馴染みの門番に挨拶をすると、町の中に入る。
「分け前なんてヤラネェぜ」「お化けが嫌いな神官よりは役に立つかも? 」
「……あ~もうっ! 好きにしやがれっ!!!! 」「うん。好きにする♪ 」
こうして、俺達は幽霊退治に向かうこととなった。
「で、アーリィさんが話を持ってきたんだけど」
アキの話が続く。アーリィは『五竜亭』の女将だ。信じられないが経産婦で、イーグルの母である。
「お袋が言うには、冒険者についていくなって」
その発言を聞いたロー・アースは『ファルコ』を無言でブン投げた。
『本物』のイーグルなら大怪我するところだが、
『イーグル』はクルクルッ! と回転して受身を取り、再びロー・アースの背に飛びついた。
「本物のファルコか」「なのの♪ 」マジややこしい。
「ロー♪ 」「なんだ? アキ? 」
「私にも抱かせて」
ハァハァと鼻血を出しながら興奮しているアキを見てファルコは心底嫌がる様子を見せた。




