1 餓鬼は幽霊が好きらしい
「やだっ!!?やだっ??!!幽霊なんてヤダッ!!!!!!!!!! 」
俺は請けないっ! そんな依頼は請けないっ!!!
お化けなんて嫌いだっ!!! お化け怖……いってわけではなぃ??! 本当だぞっ??!!!
「「……」」
な、なんだよっ???! 二人してそのシラけた目はっ???!
「何処にオバケがダメな神官がいるんだ」「ちいやぁ。春祭りは終わっているんだよ? 」
な、な、なんでお前ら大丈夫なんだよっ??! お化けだぞっ!
「大体、慈愛神殿の図書室に出ると有名だったお化けと友達じゃなかったか? お前」
アレはお化けとは微妙にちがうっ!!!
「こほん」
いつの間にか俺たちのテーブルに勝手に座っている黒髪の娘。
俺の肌が総毛だったのは決して冬の寒さからではない。
「あら。ご挨拶ですわね。ロー・アースさん」
「ひゃああああああっ??! でたっ??! 」マリアッ?!! マリアッ??!
「まりあだ~♪ 」そういってじゃれるファルコの頭を撫でながら、
『慈愛神殿図書室のお化け』改め、マリア・ムーン(ブルク)はにこやかに微笑んだ。
ちなみに、威厳の欠片も無い竜族の知り合いに言わせれば人でありながら竜族(夢幻竜)に属する。らしい。
この辺は秘密ってことになっているし、もし話して欲しいなら長くなるので後日にしてくれ(作者註:『胡蝶の文に約束を』参照)。
「ふふふ。チーアさんって」な、なんだよ???!!
「お化け。ダメだったんですね」クスクスと笑い出すマリア。お、お前に言われたくないっ?!!
「へぇ。チーアネェちゃん。お化けダメなんだ。チョットは可愛いとこあるじゃん! 」
足元で生意気な声がしたのでしばく。ファルコにそっくりだがこいつは一言も二言も多い。
「いってぇ。チーア姉ちゃん。マジ嫁の貰い手なくすぞ? アレなら俺が貰ってやってもいいけどさ」
「イーグル? お前、マジしばくぞ」俺が睨むとこの宿の息子のイーグルはあっかんべーをした。
「まぁ、アレならロー・アースに貰ってもらえばいいじゃん? 」
「……」「……」俺達二人は無言でイーグルをにらんだ。
以前、この宿の連中に結婚させられかけた恨みは消えていない。
「……チーアねぇちゃん。こっちこっち。俺、こっち」???
椅子の上に座っているファルコがクスクスと笑っている。???
「「だーまされた♪ だまされたっ! 」」二人は笑うと片方がテーブルから飛び降り、二人でハイタッチ。
「……」「……」
「「はいっ! 入れ替わりっ?!! 」」……。
クルクルッ! と二人で腕を組むと、二人は「「さて、どっちが本物!? 」」とおどける。
更にクルクルッ! と回ると脇から二人のファルコが飛び出し、総計4人に。
「「「「これぞ、秘儀! 分身の術っ!! 」」」」
4人のファルコは腕を組み、テーブルの上でタップダンス。そのまま足を交互に蹴りだして踊る。
調子に乗って4人とも竪琴、リュート、バグパイプ、笛を取り出し演奏まで披露。
突如始まった余興にやんややんやと拍手喝采する酒場の冒険者たち。飛び交うおひねり。
愉しそうに笑いながら拍手しているマリア。
「……」「……」
にこやかな笑みを浮かべた俺達二人は、それぞれ二人ずつのファルコの襟首を掴み。
思いっきり、ゴッチンコ! と頭をぶつけ合わせた。
ファルコに変装していたファルコの両親。ミリオンとアップル、ファルコ。
そしてイーグルはたまらず伸びた。




