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男装女神は14歳っ!?~夢を追う者達(ドリームチェイサーズ)冒険譚~  作者: 鴉野 兄貴
ダンビュライトは夢の輝き 前編

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3 宝石の村。トロック

 「きっれぇ~~~!!」

ファルコが叫ぶが早いが駆け出す。まてっ??! まてっ??!


 こ、コイツッ??! 俺より脚が早いぞっ!!???

たとえグラスランナーが相手でも駆け足で負けるとは思っていなかった俺だが、

ファルコの俊足は俺の予想を遥かに超えていた。


 「わ~い!!!」

ちょ??! はやっ?! まてっえっ??!!


シェイハシェイハ! シェイハ! オウィエィ! オウィエィ! オウィエーーーィ!


 途中、力尽きて地面に膝をつく。

ま、負けた……駆け足で負けるなんて……。

駆け足で負けた事実に打ちのめされ、少し涙が出る。

その涙越しにすら、俺たちの目指す里は。


 ……あ。

………うん。

………なんて……きれいなんだ。

……俺はファルコを追うことを忘れて呆けている。


 キラキラと流れる雪解け水。

実用美を追求した家々。優れた技術で作られた設備。

周囲の木々の青、緑の輝き。

その村は精霊たちの祝福の声に護られ、

人間の目には映らない輝きを放っている。


 「ドワーフの村って。

……もっと小汚いというか。洞窟の中にあると思ったぜ」

ため息をつくほど、その村は美しい。


 「そうだな。

だが連中は自分の容姿が劣ることを自覚しているからな」

生まれ持った容姿はどうしようもないが、心と身なり、住処は実用美を追求する。

それがドワーフだとロー・アースはどうでもよさそうに言い。


 「本当にきれいだな。詩の題材になりそうだ」

と、続けたので俺は噴出しかけた。

信じられないが、コイツは詩人……といっても歌も楽器も酷い腕だが。

……詩を紙切れに書くのを得意とするらしい。そんなので儲かるのか?


 でも。

「あ~。うん。いい歌作れる自信あるよ」

問題は。連中とエルフの血を持つ奴は折り合いが悪いらしいって事だが。


 「なぁ。あの村に頼めば『五竜亭』の修理は何とかなるのか?」

俺が尋ねると彼は首を縦にふってみせた。


 「ああ。間違いない。500年も前の砦を元通りにできる技術も、

あのテーブルや椅子を作り直す技術も彼らは持っているからな」

なんというか、すげーな。ドワーフって。


 水しぶきを上げて動く丸い木製の何かが村のあちこちにある。

さっきから気になって仕方ないが、コイツは何か知ってるかなぁ。


 「あっ!あのさっ!あの川のそばでグルグル回っているのはっ?!」

「ほっ!他にさっ!あの山でグルグル回ってるの!あれもきれいだな!」


 思いつくままに疑問を口にしてしまった。ちょっと恥ずかしい。

そんな俺に彼は嫌味なく。しかしやる気なさげに返答した。


 「水車。あと風車だな」

え?ナニそれ!!??世界中旅しても知らないぜっ??!


 はやく~!!!はやくはやく~~!!

何処からか子供の声が聴こえる。


 「え~と。

水や風の勢いをあのクルクル回るもので受け止めてな」

うんうん!


 「それで、粉を突いたり、

岩を細かく砕いて砂にしたり、水を遡らせたりできる」

う、嘘だろっ?!!!


 「嘘も何も……鉄だってどろどろに溶かす炉を作ったりできるのはあの技術のお陰だ」

鉄をっ??!!溶かすっ???!!


「なんかよくわからんが、風をこれでもかって吹き付ければ火の勢いが良くなるが、それと関係あると思うが……門外不出だからな」


 「すっごいねぇ!」

ファルコが足元でぴょんぴょん跳ねている。

「お、お前村に先に走ってっただろっ??」「みゅ?」


 「……」

不思議そうに俺を眺め、首を傾げるファルコ。

「……」「……」

俺たちは彼を無言で眺める。

「あんまりんも遅いから、迎えに来たの」

はやっ??!!どれだけ早く走れるんだ??!


 「はやくっ!はやくっ!村長さんが待っているよ!!」

ぴょんぴょん飛んではねるファルコ。落ち着き無さすぎ!


俺たち二人は先をせかすファルコに手を引かれてドワーフの村に入っていく。


 カンカンと言う音があちこちから響く。

宝石のような村。というより、これは宝石そのものじゃないか?というものが散見されるが、

成金趣味のようなものはなく、質素で優しい雰囲気を持っている。高い芸術センスを窺わせる。


 「こっち こっち こっち こっち こっち~~!!」

……脚はやっ??! はやすぎっ??!

俺たち二人はひぃこら言いながら彼の誘導する家に向かった。



 「ようこそ。客人殿」

無愛想。質実剛健。頑固者。ドワーフはそれらの代名詞のように言われるが。


 村長の威圧感は普通ではない。

技術者にして戦士の風格なのだろう。

だが、俺は彼から誠実。実用主義。真摯さを感じていた。


 「これが『五竜亭』からの注文書です」

ロー・アースは村長にエイドから受け取った手紙を渡した。


 「うむ。足労かけた。即座に村の者を向かわせよう」

村長はそう約束してくれる。彼らは騎馬を使うのを嫌う。

加えて移動の速さはその脚の短さから簡単に想像できる。

夜通し徹夜の強行軍になるが、彼らの体力上、問題は無い。


 「……しかし、高いぞ?お前たちが払える額では無いと思うが」そうなのだ。

値段交渉で成功した分だけ、借金を減らしてもいいとエイドは言っていたが。


「しかし、あの建物を修理できるのはアンタたちだけなんだろ?」俺は問う。

「……古代魔導帝国の遺跡でもあるからな。余計な事をしたらどうなるかわからん」


設計図通りに戻しておかないとヤバイことになるらしい。


 「……沈黙は金やミスリルにも勝る」

これ以上話すことは無いと言うことか。


 「あ、あのさっ?できたら安く」

村長は髭の奥に埋もれた瞳から恐ろしい眼光を放った。


 「……失礼。実は」

確かに技術を誇る彼らに『安くしろ』というのは軽率だった。


 ロー・アースが以前直したばかりの筈の『五竜亭』がまたもぶっ壊れてしまった理由を語りだした。

「そんな理由で我々が直したばかりの建物を壊したのか」「俺らの所為じゃないです。あのボンボンが逃げたんです」

瞬間移動テレポートの座標未設定とかしゃれにならん理由だが、

親父に叱られるのを恐れた伯爵家の跡取り息子はそのまま自宅に帰還リターン

「その日は勉学に励んでいた。部屋から出ていない」の一点張りで逃げやがった。


 「あの坊主め。また女がらみで我々の作ったものを壊すとは」

一瞬、髭の奥で村長が苦笑いしたように見えたが。


 「まぁ、お前たちがとばっちりを受けたという話は信じよう」ほんと?

「……技術の安売りはせんぞ」けち。


 「ね、ね!安売りしないってことは、僕らがうっていいのっ!!?」

??

 「エイドから何か言われたのか??」

村長に問われるファルコは「ううん!言ってみただけ!」と元気に答えた。


 おまえなぁ……。

がっくりくる俺たちの足元で小さな妖精(村長より小さい)はニコニコ笑っている。


 「む~。確かに無いということはないな」ホントッ??!

「うちの娘がいつまでたっても結婚せんのだ。もし、良ければ」


 いらん!!!!

ドワーフの娘って髭もじゃで団子鼻で

チビでビヤ樽みたいな筋肉質の腹と尻と胸と腕と脚。短足だろっ!


「いい相手を探してくれんかのう」

無理無理無理ッ!!!同族で探せっ!!!


「いいよっ!!」

ファルコは元気に答えた。おいぃ?


 「おおっ??!そうか!探してくれるかっ!」

村長は嬉しそうにファルコの頭をゴツゴツした手で撫でる。

その手には良くわからないイボがたくさん。


 「へへへっ!」と照れるファルコ。

……おい。安請け合いしてるのはどっちだ。


 「因果律を司る古き惑星神の愛を受けた草原妖精の祝福があれば素晴らしい結婚になる!」

そういって村長は楽しそうにしている。ドワーフは意外と迷信深い。


 それにと村長が俺を見る。

「慈愛神の使途で、黒髪黒目の半妖精!!!

神の子の祝福があれば、我が娘はおろか、我が村は100年は安泰だろうっ??!」

おい、おっちゃん。巻き込むな。あと、半妖精云々のそれ。出鱈目だから。


 「僕ら、全員奥さんいないよ?」「おお?!!それは良いな!」

どうせ婿を貰うなら村の外のもののほうが良いとか抜かしだす村長に俺は危機感を持ちだした。

こ、こんなところで結婚なんてしゃれにならんぜっ??!

エルフの血筋もちってのは隣にいるだけでドワーフの機嫌を損ねやすいんだぜっ??!


 「おい。誰か。『孔雀石』を呼んで来い」「はい。村長」

ドワーフは髭だらけで髪も伸ばし放題なので年齢はまったく判らん。


 だが皆、髭や髪の手入れはよくツヤツヤ、

服装はサッパリしていて思ったより不潔感がない。


 冒険者やってるドワーフが汚すぎるだけらしい。

まぁ人間の冒険者も汚いが、容姿の問題があるしなぁ。


 「……失礼します」

頭を下げて小さな扉をくぐって入ってきた若い女性。

つややかな薄い金髪。緑の瞳。骨格そのものが人間と違う細身の身体。

儚さと強い意志を両立させた顔立ち。細い目と眉。低めだが通った鼻筋。

彫りは浅いが美しく神秘的な笑み。なにより尖った長い耳。


 「エルフっ???!」

俺たち三人は驚いた。

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