10 敗北より簡単
「逃げろ。チーア」お前はどうするんだよ。
早くッ! と叫ぶロー・アース。俺の目の前で。
彼の身体が貫かれた。
「ロー! ローッ!!!! ロー・アースッ!! 」
助けなきゃ。傷を癒さなきゃ。
「離せッ! 離せよっ! 離してッ レッドッ!! 」
暴れる俺にレッドの強烈な当て身が入った。
ロー……。あ……。
突入は順調だった。
あっさりと俺たちは敵の麻薬製造作業場を制圧。
俺たちはその混乱に乗じて敵の首領を討つために走る。
敵は優雅にもワインを片手に俺たちを待ち構えていた。
「来たか。ゼム商会を潰してくれた冒険者とは君達かね? 」「不本意だけどな」
年齢は20代前半。若い。そして優雅な身のこなしからそれなりの地位にある人間なのだろう。
肩をすくめてそいつは笑う。
「噂の冒険者達がどれほどかと思ったが」期待はずれだな。と彼は呟く。
「期待はずれかどうか、俺の赤い瞳を見てから言いやがれ」
レッドが黒水晶で出来た小さな丸めがねを外して笑うが。
「麻痺の邪眼か。効かぬわ」青年はニコリと笑う。
「??! 」「レッド? 」
俺の全身に怖気が走る。レッドの右手が見る見る灰色に染まっていく。
「レッド! 」俺は彼の瞳を左手で覆い隠した。
俺の左腕が痺れ、ビキビキと音を立てて固まっていく。
「これが、石化の邪眼だ」な……。
どすん。小さな石の塊が転がる。その石像はファルコの形をしていた。
咄嗟に視線をそらせたのは俺とレッド。そしてロー・アース。
「さて、どれほど楽しませてもらえるかな」視線をそらした俺の耳に、敵がゆっくりと剣を抜く音がわざとらしく聞こえた。
「逃げろッ! 敵は邪眼持ちだっ!!!!!! 」
俺は『風の声』を使って館中で制圧作業を行っている制圧班に警告を放つ。
その俺の背を強烈な爆風が襲った。
「逃げろ。俺は元々『呪われている』」
ロー・アースが二本の剣を抜く。
「ほう。貴様には邪眼が効かぬのか」「ああ。くだらない呪いがかかっているからな」
二人が剣をあわせる音、明らかにロー・アースが押されている。
「ロー・アースッ! やめろっ! お前も逃げろっ! 」「すまない」
「妹さん。どうするんだよ」「ほう。妹がいるのか」「どうでもいいだろ」
よか。ねぇよ。
「いけっ! チーアッ! 」いやだ。いやだ。
彼の身体が貫かれた。
「ロー! ローッ!!!! ロー・アースッ!! 」
助けなきゃ。傷を癒さなきゃ。
「離せッ! 離せよっ! 離してッ レッドッ!! 」
暴れる俺にレッドの強烈な当て身が入った。




