9 決戦より簡単
「行くぞ」「なのの」「作戦は打ち合わせどおり、静かに、速やかに行うこと」
俺たち冒険者、戦神神殿、慈愛神殿、正義神殿。そしてアンジェリカとリリと何故かピート。
隠密行動と戦力に長けた総計15名は首を縦に振り合った。
「突撃班は速やかに敵首領を倒す。生死は問わず」
首を縦に振る俺たち三人。
「制圧班。貴方たちは危険な役目です。正面から突撃していただきます」
各神殿選りすぐりの神官戦士たちは首を縦にふる。
選りすぐりといってもこの連中、見た目は美男美女でとても戦闘が出来るように見えないが、
隠密と戦力の双方に優れた人物揃いである。
「こちらの指揮は私が行いますが異存ありますか」ジェシカが艶然と微笑む。
あるわけない。ジェシカに喧嘩を売った正義神殿の聖騎士団長が素手のジェシカに殴り倒されて床に転がる姿を見れば。
久々に姿を見せたと思ったら。よりにもよってジェシカに喧嘩うるとは。
「そして」
「水も漏らさないわ」謎めいた笑み。というか強烈に怖い笑みを浮かべるアンジェリカとリリ。
増援が来たらそちらも担当する役である。ピートも混じっているが大丈夫なのか。
隠密行動が苦手な連中が周囲を固めているので、もし敵に増援が来ることがあれば彼らの出番だが、アンジェリカとリリだけで大丈夫なのか。
「まぁ。なんとかなるさ」
知り合いの盗賊。レッドが俺の背中をバンバンと叩いた。
同じ冒険者である精霊使いのフレアとエルフの『ぎんのかぜ』ことシルバーウインドは別件で忙しいし、
聖騎士どもは騒ぎを拡大させるので遠くから様子見役である。街中で連中が暴れたらたまらん。
よって冒険者仲間の聖騎士・バドの活躍も今回は見れないと思う。まぁ無難だ。
30分を待って、聖騎士、戦神神殿の神聖傭兵、衛兵の突入とします。
ジェシカは呟いた。つまり、30分でケリがつかなければ大事になる。
ちなみに、本件の手柄は衛兵たちのものになることは決定済みである。
「あの屋敷で間違いないのか」俺の問いに。
「探りを入れた後ですので」ジェシカはニコリと笑った。
頷くファルコとピート。リリ。
「見取り図は全員、頭に叩き込んだな? 」
ロー・アースの言に頷く。俺たち。
「行きましょう」




