6 兄妹喧嘩より簡単
「おい。ファル。はぐれるな」
面倒なので相棒の白馬にファルコを押し上げ、町を歩く。
ちなみに、白くてハンパじゃなくガタイがいい馬は滅茶苦茶目立つ。前に馬泥棒呼ばわりされて斬り殺されかけたし。
「うふふ。あはは」
女の子が青年の腕に絡みつき、青年が迷惑そうな顔をしている。
その荷物は、右手だけにいっぱいなのに反して彼の利き腕である左手は何も持っていないが。
「エフィー。左手に触るな」「いいじゃない。右手は荷物だらけだし」「お前が買わせたんだ」
……ロー・アースじゃん。見なかったことにしよう。
俺はシンバットの向きを変えようとすると。
「こんにちはっ! 」
兄妹にハキハキと喋るファルコがいた。お前……。
「あら。ファルコさん。お久しぶりです」「なのです」
この間あってたと思う。一緒にいたぞ。
耳まで赤いし。うーん。これは俺だけ離脱したほうがいいのだろうか。
「チーア」小声でも俺の耳には届く。むしろロー・アースが小声で話すほうが珍しい。
「どうなっている」「お前らが役に立たないから大変だが、とりあえず神殿は大丈夫だ。戦神神殿と正義神殿の協力を取り付けた。あと多額の寄付を頂いた」
一応、心配してたんだな。コイツ。
「すまない。陶磁の人形の件だが俺も何とか調べた」
妹さん。恋人かとおもうくらいべったりなんだがどうやって調べた。
まぁ恋人と言うにはあまりにも幼い相手だが。
ロー・アースと話している間、ファルコはエフィーの気を惹いている。本件では初めて役に立った。
「どうにも変な技術だよな。皿だって飾りにしか使わない」「ましてや人形の顔でしかも量産らしいし」
頭の痛い話だ。技術に優れたドワーフたちもビックリだろう。
「恐らくだが、人形には『悪意の鍵』が仕込んである」「……」
子供たちになんてことしやがる。
「人形を何とか手に入れた子供たちは『悪意の鍵』にやられるってか」「ああ」
許せん。ぶっ殺す。女の子をなんだと思ってるんだ。マジで。
別に旅暮らしの子供の頃、人形遊びをする他の女の子に憧れていたってワケではないが。
「そういうことだったんですね」
エフィーがにこやかに俺とロー・アースの間に立っていた。いつの間に。
「おにいちゃん」「はい」「はい」
何故か一緒に反応するファルコ。
「やっつけてきなさい」「解りました」「おう」
どんだけ妹に弱いんだよ。お前ら。




