2 『五竜亭』の一夜
「ふふ。久しぶりね。ロー・アース」
「やっぱり似合うわ」微笑むアーリィとアキ。
嫌そうにしているロー・アースに
二振りの剣と機械式弩弓を手渡すエイド。
「ロー・アース。『久しぶり』だな」
「嫌だと言っている」あくまで意地を張るロー・アースに耳打ちするエイド。
「チッ」舌打ち。
ロー・アースは俺とファルコを睨みつけた。
なんだよ?失礼な奴。
「いいか。死にたくなければこれから先輩達の話をよく聞いておくことだな」
彼はそういうと椅子に座った。なんだコイツ。うぜぇ。
ドヤドヤと男達が店内に入ってくる。
女や、人間でない奴らも少々。
さっきのは冒険者ともいえない連中で、
店主に見つかったらつまみ出される存在らしい。
俺をみてからかいだしたり、
ファルコをみて抱きしめたりしているが、こいつら本当に大丈夫か?
さっきのチンピラどものほうが威圧感はあったと思う。
「じゃ、しっかり色々聞くといいぜ?いいか?俺から行こうか?」
誰かが叫ぶ。彼は自らの冒険を淡々と語り。
「……で、この後、俺はどうしたと思う?」
「へ???」「みゅ???」
俺とファルコが不思議そうにしているのをみて彼は微笑む。
ロー・アースは苦笑いしている。
「答えないと一杯ワイン追加だ」
わ、わかったよ。
「はずれ。そのとき俺はっ!」
浪々と解説する青年。俺もファルコもジュースを飲んでいる。
流石に未青年に一杯はキツイとアーリィがこっそり取り替えてくれたらしい。
「冒険者」どもは意外と気さくだった。
彼らは勝手に武勇伝とも質問とも取れぬ『話』を続けていく。
次々と入る注文。今夜は眠れそうにない。
……。
何処からか鳥の声が聴こえる。
……酒場に死屍累々と倒れる『冒険者』ども。
何故か介抱させられている俺。
あの夜は酒の呑めない俺でもそれはそれで楽しいものがあった。
「じゃ、妹さんのことは任せて」「すまんな」
あっちではロー・アースとエイドとアキがなにか言っている。
こっちでは。「おい。ファルコ。どけ」「むにゅ~」寝るな。こら。
「じゃ、行くぞ?」何処へ???
「お前ら、今すぐ10万銀貨を払う事が出来るか?」へ???
アキはニコニコと笑うと何事か書いている羊皮紙を俺に突きつけた。
「なにこれ?」「宴会の請求書?」おい。勝手に歓迎会やってそれはない。
「と、いうか。俺、字あんまよめないんだが」
「仕方ないわね……」アキはその金額を告げた。
「……なんじゃこれ」
膨大な請求額に頭がおかしくなりそうなんだが。
どうせ、床とテーブルの借金があるからと上乗せした宴会だったらしい。
そして、話は冒頭に。
「払ってね♪ あ。利子はつけないでおくけど、払わない場合は呪いをかけるから」
なんじゃそりゃああああああああ!!!
こうして、俺はなかば脅迫されるかのように『冒険者』の仲間になり、
ドワーフの村にいって、破壊された『五竜亭』の修理を頼みに行く羽目になったのである。
……馬鹿親父のことを失念したままだったため、
このとき、親父が家で飢えていたことを俺は知らない。




