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8 乾杯

 「お母さん???! 」「アキッ!! 」

親子二人は涙を流して抱き合う。


 「ごめんなさいっ! ごめんなさいっ! お母さん!! 」

「なにいってんだよ? この子は?? 」


 感極まったアキは泣き出した。母の完治と、自責の念に。

「あああああぁぁぁぁぁぁっっっんぅぅぅっ!!!!! 」


 「完治したぜ。クソ餓鬼。感謝するよ。クソ餓鬼は失礼だな。チーア。ありがとう」

「チーア! チーア!!! お母さんを治してくれてありがとうっ!! 本当にっ!本当にっ!!! 」


 いや、実際に治したのはシルバーウィンドとフレアだしな。あとメイの薬の力も借りたし、

今までの親子相部屋じゃなくて、気密の効いている部屋を用意してくれたエイドさんにも言うべきだ。


 「私の所為で、皆に結核の病気の元を」

笑えよ。アキ。そんな顔、お前には合わないさ。


 「いや、病気は私からだ。まさか病気にかかっていなくとも病気を移すなんて」

メイも娘をかばう。


 「荷物をまとめました。お世話になりました」

親子二人はエイドさんとアーリィさんに頭を下げる。


 母親の看病のつもりで、母親の結核を長引かせた。

母親を護るつもりで働き、皆に結核の元を配っていた。

そう知った時のアキの嘆きは計り知れ得ない。


 しかしだ。『病気治療』の祈祷で『身体が軽くならない』人間のほうが珍しい。

ようするに、この国のほとんどの人間が、結核かなにかの『かかりかけ』に該当している。

だから、気に病む必要はないと伝えたのだが、アキの嘆きはやむことはなく。

止める俺達三人を振り切って、二人は少ない荷物をまとめてしまった。


 そんな二人を冒険者達は非難するどころか、祝杯を挙げて魅せた。

「あははっ!! 治ってよかったなあっ!! 」


 やっぱり、冒険者こいつらは気風が良かった。

「大工の真似事をさせられてどうかと思ったがなっ! 」

その件は、マジ。すまん。あとで倍返しする。


 「無事、結核は沈静化したって? 」「おうさっ! 」

「「「「『五竜亭』の栄光に!!! 乾杯っ!!!!!!!!!! 」」」」

「「「「散った命に哀悼をっ!!! 慈愛神殿とっ! 明日に!! 乾杯!! 」」」」

 「「「「メイのクッソまずい薬とっ!!! アキのドジに乾杯ッッ!!! 」」」

あはは。笑う俺とロー・アース、ファルコ。苦笑いするアキとメイ。


 「行くの? ここはあなたたちの家なのに? 」

アーリィさんは優しくアキに微笑んだ。


 「旅立つ娘を止める事はしねぇ。って言いたいんだが。

アキ。そりゃドジとサボタージュばかりだが、お前は俺の娘みたいなもんさ。

あと、メイさん。結核の予防薬、アレ作ってくれねぇかな。こまめに皆に飲ませることにするから」

……。


 「ふ、ははは。お、おかしいね。結核は治ったってのに、胸が苦しくっていけねぇ」

メイは胸を押さえて泣き出す。「お母さん」アキも泣き出した。


 「え? 胸なんてメイにあったっけ? 」野次馬連中がチャチャを入れる。

「じゃかましいわっ! 青二才どもっ?! 蛙にするよっ??!! 」メイは顔を赤くした。


 和気藹々と酒を酌み交わすみんなに微笑みがもれる俺。

次は、アンジェたちかな? 仮説がうまいこと行っていれば今頃。

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