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第十五夢 瞳の泉に星を湛えて プロローグ

 「お願い。お母さんを治して」

「結核は悪魔の病。治しても即座に再発します」

「なぜ、治したのですか」


「なんで諦めなきゃならないんだっ!!」チーアがまたキレた。


チーアが治療したと言う噂を聞きつけて慈愛神殿に押し寄せる結核患者たち。

機能不全に陥る慈愛神殿。倒れる同僚。

果たして、チーアは結核を鎮圧できるのか?

 「どうしてっ!どうしてお母さんが治せないんですかっ!! 」

小さな子供が神官長のカレンに食って掛かっている。


 まただ。あの子、しつこいんだよなぁ。

「何度も言いますが、結核は悪魔の病気であり、私達には延命を施すことしか」

カレンは辛そうに呟く。


 慈愛神殿の施療所にはさまざまな患者が『車輪の王国』中から押し寄せてくる。

貧乏神殿の癖に世界一の医療施設と評判であり、

主に『寄付』で成り立っているが、うちの神殿では財政面で一番のお荷物部門である。

早い話。薬代も払えない貧乏人は医者にかかるな。

 

 タダで病気を治してくれるといわれれば、

どうでもいい風邪から致命的な重症患者までさまざまな人々が押し寄せるのは当たり前で。

いくら俺達があらゆる毒や病気、怪我を治すことができるといっても限りがあって。

『結核』はその中で筆頭に当たる病だった。


 「おい。餓鬼」「チーアちゃん」

子供の扱いは慣れているので、彼女を連れ出す。ついでに逃亡フケるつもりだ。

高司祭さまには悪いが、俺、辛気臭いのは嫌いなんだ。


 「遊びに行くか。それとも『アヤトリ』がいいか?」兄貴はこういう『遊び』も巧かった。

「チーアちゃん。お願い」うん?

「チーアちゃんはウソつかないよね」震える声で問いかける少女。

「ああ。俺ほど正直者はいねえ。いつもロー・アースやジェシカにぶん殴られてるだろう? 」

ニヤリと笑う俺にクスクスと笑う少女。「じゃ」


 「お母さんを治して」

少女の瞳は俺をまっすぐに射抜いていた。

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