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11 神竜降臨

 「まさかお前らが名代の一族だったなんてなぁ」

チンピラにボコボコにされていた兄妹だが、着る物で人間の見た目は激しく変わる。


 「また、竜大公様と名代様にお仕えできるとは」

老人が泣いて喜んでいる。追放された忠臣たちは20年間苦難の日を過ごしていたそうだ。


 「我らは逃亡農奴なのです」ふむ。

「竜族の地にてわが身を生贄にしてでも自由が欲しいとこの地に町を築きました」

「そして、我は自由を求めるものを護る。よき関係だ」坊やがそういって頷く。


 「生贄を要求する邪竜って話だけど」「言いがかりでございます」

彼らはうううと泣き出した。


 「先代がお隠れになった隙をついてこの詐欺師めが悪党共と共に」

ちなみに、詐欺師もチンピラどもも現在御縄について、農地で強制労働中である。

「よかったよかった。じゃ、あとは」「お待ち下さい」坊やが呟いた。


「私が、僅かな力しか持たない理由がわかったのです」


……。

 ……。


 「(くそ。った……れ)」

声が出ない。別にどうこう言う理由ではない。『出せない』のだ。

その原因となった前足が蝙蝠の翼となった巨大な山猫が宙からファルコを蹴飛ばした。

小柄な彼は吹き飛ばされてしまう。

ロー・アースも迫り来る巨大なカニのバケモノに苦戦しているが。

彼の剣はまったくもってダメージを与えることは出来ない。


 『攻撃力強化』『魔導封印』『沈黙』

前足を蝙蝠の翼にした猫もどきが何故か魔法を唱え、人の言葉を話す。

『防護強化』

まただ。また硬くなりやがった。

そして、カニのバケモノが大きな鋏を振ると何処からともなく新手のカニのバケモノが。


 国の水源を犯す魔物を討つべくやってきた俺たちだが、成す術も無い。

タダでさえ硬いカニは『防護強化』を使い、余計硬くなり、よしんば倒しても新手が虚空から現れる。

猫の魔物は『防護強化』の加護を受けつつ、『沈黙』や『魔導封印』。

ロー・アースやファルコにかかった武器強化の魔力が薄くなり、消えていく。


 「(アンジェ)」

声が出ない。すまない。こんなところで。

「(アンジェ。アンジェ。ごめん。俺。お前に言いたいことがあったのに)」


その時、紅蓮の炎が俺の視界を焼いた。


 「大丈夫? チーア」

バタバタと焼かれて香ばしい臭いを放つカニどもの前に立ちはだかる小さな姿。

全裸にスケスケの絹を纏った精霊使いの少女。名前はフレア。

 「(な、なんでおまえがここに)」「ああ。深いことは気にしない♪ 」


 「むぎゃああああああああああああああっ??! 」????

空中でウザい魔導を次々と繰り出していた化け猫が地面に落ちてきた。

なにかわからんが、へんな幻を見ているらしく、錯乱している。

そこに黒い影が襲い掛かる。

「チーアッ! 間に合ったッ! 良かったッ! 」

戦闘中なのに俺に抱きつくヤツ。こういう不届きものは一人しかいないわけで。

「(レッド??!)」声が出ないが。コイツは同じ『五竜亭』の先輩冒険者だ。

「援軍に来てやったぜッ!!!!!!! 」

見ると、レッドだけではなく、聖騎士バドたちもいる。

援軍を寄越すなら先にほしかった。マジで。


「竜大公様。邪竜どもの力が弱まりました。今です」

姿は見えないが、声が聴こえる。この声は。マリア?


 「大儀であった」坊やが微笑む。

「皆のもの。皆の気を我に。自由を愛するものよ。勇気を我に分けてくれ」

坊やが剣を捨て、軽く背を伸ばすと、優しい風が坊やに集まっていく。

風だけではない。水が、炎が、土が。坊やを取り囲み。


 坊やだったモノは。巨大な龍へと姿を変えていく。

「浅ましき眷属共。覚悟はいいか」

その美しい巨龍は。一気に息吹を吸い込み。光の奔流を吐き出した。

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