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9 簒奪者と竜大公

俺たちは腕にロープを括りつけられて兵士に連行されていく。

何故か俺だけ別のロープ。兵士長曰く「コイツは私が直々に尋問する」らしいが。


 ファルコを蹴る兵士。なんてことするんだよっ!

「とっとと進め! 」「すすんでいいの? 」「そうだ! 」

ファルコは「わかった」と頷くと、恐ろしい速度で走り出した。


シェイハシェイハ! シェイハシェイハ! シェイハシェイハシェイハシェイハ!!

オゥイェィ! オゥイェィ! オゥイエェェェェェェェェェェィィィィィィィィイ!


 ……。

廃屋の横を通り、路地を通り、一気に市場のほうへ兵士たちを引き摺っていくファルコ。

この町は排泄物の処理を丁寧にやっているらしく、路地含めて非常に美しい町だが、にしたって。なぁ。


 「ファルッ?! ちょっとスピード落とせッ?! 」

「ま、まて、引っ張るなッ?! 」「く、首にかかっ……待て……」

都合12人がたった一人の幼児のダッシュに引き摺りまわされる異常な風景に町の人々が目を剥いている。

色々悲惨なことになっているな。俺はため息をついた。


 ちなみに、俺には性的危機を脱するための女神の加護がかかっている。

要するに、『そういう目的の』捕縛はあまり意味が無い。

まぁ多くは語らないが、そういうことである。何処の世界にもホモはいるもんだ。うん。


 俺を見失ってキョロキョロしている不届きな兵士長らしい男に俺は手首と足首を護るチャクラムをいくつかぶつけた。たぶん死なないだろうが、とりあえずムカつく。

見事気絶した彼を思いっきり踏みつけると、俺はロー・アースたちを追うことにした。


 「あ、迷惑かけたな。これは当面の駄賃だ」俺はそういうと、家主の二人に路銀を渡した。

ううううううう。金が無いのにナニやってるんだ。ミリアから借りた貴重な路銀が。


 バタバタと音がすると殺気だった町の人々が棒を持ってやってきた。

「どいてくれ」「そこをどいてくれ。他所の町の人」へぇへぇ。


 うわぁ。兵士長、町の皆にボコられている。

やっぱ仕事は誠実にやらんとだめだよなぁ。同情するけど、助けないからな。


 さて。と。

俺はファルコを追って駆け出す。

「しんば……」流石に白馬は目立つな。前もトラブルがあったし。

そう思っていると妙な感覚。いつの間にか俺はシンバットの上に乗り、城を目指していた。


 「あ? あれ? シンバット? 」

嘶く白馬は恐ろしい速度で街中を駆ける。

「??! 今、町の人すり抜けなかったか?! 」

見間違い。ではないと思うが。


あっという間に城門を飛び越えた(!)白馬は俺を降ろすと「行け」とばかりに首を振る。

まぁ、いくけどさぁ。俺、ファルコと違って隠密行動は……。


 あ、そっか。

『姿隠し』。そういえば以前習得していた。透明になる便利な魔法である。

親父が『俺にもその魔法を教えろ』と真顔で言ったので殴ったとき以来、使えることを忘れていた。


 姿を隠せるといっても、集中が途切れると姿が見えてしまう。

人にぶつかったり、気取られないように慎重に歩く。

あちこちでヒヤヒヤする場面があったが、なんとか謁見の間っぽいところに到着。


 うわ。悲惨。

ボコボコ殴られたロー・アースとファルコ、坊やがいる。

それを見下す、領主っぽい男。コイツが竜殺しか。


 「竜大公殿が帰還された。か。面白い冗談だな」

男が嘲笑すると坊やは「真実だ」と仏頂面で応えた。


 「私を庇ってこの少年と男は傷ついた。謝罪を要求する。さもなくば相応の態度に出る」

少年が冷たく言い放つと領主は大笑いをして返した。


 「竜大公殿がこの町を支配していらしたというのは20年も前の事ではありませんか。

そして。私は生贄を要求する悪辣な竜である竜大公殿を倒した勇者。

どちらが正しい支配者か子供でもわかるというもの」そして微笑む。


 「三人を斬首しろ。あと、逃げた一人と名代の末裔は殺せ。もう必要が無い」

そういってヤツは踵を翻した。


 「じゃ、しかたないね」

ファルコはノンビリ言うと、軽く跳ねる。後ろ手にされた腕を飛び越し、

手枷を前に持ってきて、手首を軽くひねった。簡単に手枷が外れる。


 「へんしん! 」謎のポーズを取るファルコ。

彼の右手に白い短剣。左手に黒い盾が出現。ボロボロの服が綺麗な服に変わる。


 「いたのか? 」「そりゃ、そうだろ」

俺はロー・アースの武器をなんとか発見して回収していた。マジで重かった。

彼の拘束を解き、肩を叩く。「いっちょやりますか」「ああ」


 ワラワラと出てくる兵士たち。その数9名ほど。

(兵士長は現在、町の片隅でチ●ポ丸出しで縛り付けて晒し中)

剣を抜く領主。うわ~。つよそうだねぇ(棒読み)。


 「不届き者ども。言い残すことがあれば聞いておくぞ? 」

勝ち誇る領主にニヤリと笑う俺たち。


 「ロー」「この町は『車輪の王国』の管轄外だ。思いっきりやっていい」「そだね♪ 」

剣や槍を持って詰め寄る兵士に笑いかける俺たち。小さな町だ。この9人が全戦力であろう。


 「ごめんね♪ 」

ファルコの蹴りが兵士の槍をふっとばし、後ろで勝ち誇る娼婦っぽい女官のドレスを地面に縫い付ける。

「まぁ。その。さっきの軽いお返しだ」ロー・アースの剣が兵士の槍を寸断し、柄で兜をぶん殴ってへこませる。


 「はいはい。皆さん。『困惑』してくださいね♪ 」

俺の魔法で一瞬戸惑う兵士をファルコとロー・アースがあっという間に袋叩きにする。


 「き、貴様ら……何者だッッ?!!!!!!! 」

領主が震えながら剣を抜いた。


 「覚えておけ」「俺たちは」三人で叫ぶ。

「『夢を追う者達ドリームチェイサーズ』だっっ!!!!!!!!! 」

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