8 竜大公の領地
「うわぁ」「おお」「きっれ~」「この町がそうですね」
道なき道をテクテクテクテク。歩いた先にあったのは不思議な雰囲気の隠れ里のような町。
「ホントだ。竜の像がいっぱい」
ファルコが遠くからキョロキョロと町を見回す。
って。ドンだけ目が良いんだよ。俺でさえここからだと人間サイズの像までしか判別できないぜ。
小さな岩山に囲まれたその隠された町は、明らかに車輪の王国とは別の文化を感じさせる。
「言葉、通じるかな」「さぁ」「通じると思うが、一応通訳の魔法の巻物を用意した」
このボケーとしてみえる男、ロー・アース。意外と準備万端だ。
「で、あの城に住むヤツが」「本来は人間の名代が住むのですが」
坊やは悲しそうに呟いた。「先代の竜大公がお隠れになったとき、竜を殺したと主張するものが」
坊や曰く、竜には寿命はないが、「消える」ことはあるらしい。代わりに生まれたのがこの坊やらしいが。
「先代の記憶はないのか」「おぼろげながらありますが詳細までは」
正直、この坊やが本当に竜かはさておき、ある程度は言うことを信じてもいい気がする。
素直でイイヤツだし。威厳は欠片もねぇけど。
「しかし。アレだ」「ん」
俺は眉をしかめてみせた。普通の人間よりは目が良いとは言え、妖精の血を引かないロー・アースには見えていないようだが。
「治安がいいとは、言いがたいな」
あちらこちらに、ソレっぽいヤクザ者がいて、強請りタカリに精をだし、衛視は知らん振り。
「みゅ! 」
ファルコが真剣な顔をした。
そのまま岩山の上から街に向かってダイブしていくファルコ。
……。
……。
「助けてくれてありがとう」
年齢はアンジェと俺の間くらいの女の子と男の子。あちこち服が破れ、酷い状態だ。
「きにしない。きのようせい」「気の所為ですか」「そうともいう」
会話にすらなってない。
「なんであんなチンピラがのさばっているんだ」
「上納金さえ払えば、領主様に反逆しない限り多少の無法は許されてしまいます」
「みゅ」「許さぬ」眉をしかめるファルコと坊や。
「おい。ファルそれってつまり」「うん」
建物と言うのも憚れる廃屋の外を見ると、周囲を剣を持ち槍を構えた兵隊、10人ほどが囲んでいた。