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第十四夢 竜と幼児(ファルコ)と土産のカニ一匹 プロローグ

 「チーア! 」

俺の名前はチーア。冒険者だ。

普段は掃除だの洗濯だの子守だのドブ掃除などを……。


 冒険ぽくないって? 事実なんだから困る。

そして毎回、何故か死に掛けている。


 「チーアったら。無視しないで」

俺の横で黒い瞳を潤ませる美少女。名前はアキ・スカラー。

黒髪黒目。垂れ目に垂れ眉。

冒険者の宿『五竜亭』のウェイトレスにして自称俺の友人。


 「仕事がない」

たった一週間の短い夏を堪能し、秋の風を感じ出したころ、俺は深刻な問題に直面していた。

娘の稼ぎを娼館ひとつ取り潰すほど派手に使い込んだ莫迦親父と絶縁中の俺は深刻な食糧難に襲われていたのだ。


 「なんでも良いから良い仕事を紹介してくれ」

そういってアキに泣きついたのはいいが。


 「私の永久就職先」

却 下 。 というか仕事がないと言っただろう。


 「え~。慈愛神殿のトーイ様の弟さんじゃない~」

そういってアキはしなを作って見せるが。俺、実は女だったり。

この半年で膨らみまくった胸の異物を誤魔化すのが最近辛くなってきた。

不本意だが絶縁中の莫迦親父に紹介された下着屋に頼らざるを得ない。


 「でかくなったなぁ。ティアちゃん」

下着屋に言われて泣きたくなったのはナイショだ。

そんでもってタダでさえ金がないのに法外な報酬を請求されたのも。

とはいえ、仕事の出来自体は満足している。


 灯り用の獣脂の臭いが鼻につく。

その周囲で乾いた柑橘の臭いを振りまく赤い服の少女アキもまた鼻につく。


 「ねえったら。チーア。機嫌直してよ」「うっせ」

俺は一気に叫んだ。


「竜退治なんて危険な仕事何処の阿呆が受けるんだッ?! 」

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