エピローグ 夢を追う者たち (ドリームチェイサーズ)
エピローグ 夢を追う者達
「おにいちゃん!おなまえなんていうの?!」
楽しそうに尋ねるグラスランナー。
「俺は……てぃあ……チーアってんだ」
グラスランナーに癒しの力を、ウェイトレスに心を癒す祈りを祈祷した少年(実は少女だが)はそういう。
二人は握手を求めて手を伸ばすが。
「別に聞いていない」
青年はそっけなく返した。
残念そうに頬を膨らませるグラスランナーと少し頬が温かくなっていた少女。
少女は更に頬を赤らめ、青年の背を強く睨んだ。
「お前が一緒に吹っ飛ばした床や机や椅子の料金を請求される前に逃げるぞ」
そういってワイズマンの手を引く。
が。ワイズマンは青年を無視した。
「人呼んで"獅子殺し(ライオンスレイヤー)"のロー・アース君だよ」
「お~!」ぱちぱちと手を叩くグラスランナー。
「ぼく!ふぁるこ!ふぁるこみすみる~♪」
機嫌よく話すグラスランナーを眺めつつ、ワイズマンは腰をグラスランナーの視線まで落として問う。
「……ミスリルではないのかね?」「そうともいう」
なぜか正座で受け答えするファルコ。おかげでワイズマンまで手をつくことになった。伯爵なのに。
ファルコがいつの間に座っていたのかは謎である。
「ふふふ。面白いコ」
そのファルコを後ろから抱きとめるウェイトレス。
「アキ・スカラーよ。ファルちゃん」
「……!!!??」「ちょ?なんで逃げようとするの?」
必死で抜け出そうとするファルコを抱きしめようとする彼女に抗議するアキ。
「第六感的な危険感知能力があるそうだぞ。グラスランナーと言う奴は」
「ロー。……それって失礼でしょ?」
ふくれるアキに微笑むロー・アース。
ところで。アキはにっこり微笑んだ。
その手には膨大な額の請求書があった。
ワイズマンは既に『帰還』していた。
……。
もし、郊外の森の中に奇妙な形の冒険者の宿があれば。
もし、君が何か悩み事や叶わぬ願い事を抱えているなら。
迷わず『彼ら』を指名して欲しい。
きっと彼らの借金が減……君の願いは叶うから。
尤も、『余計なオマケ』については甘受してくれたまえ。~ワイズ・ワイズマン~