11 出れないじゃないか
ガッ!!!!!!!
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「おい! こっちだ! ネェちゃん!!! 」
目を開けると悶絶する老人が見える。ほのかにスパイス臭い。
グラスランナーが目潰しに使うスパイスや砂をつめた卵のようなものを受けたらしい。
窓の外からファルコにそっくりな幼児の姿がある。いつの間にいたんだろう?
「まて!! 」老人の声が聴こえるが、流石に斬られると判って待ちはしない。
俺はロー・アースを窓の外に放り出し、自分も窓の外に身を投げた。
幸いにも一階なので怪我はしない。
「……くそ。痩せろよロー・アース!! 」
別段彼が太っているわけではないのだが、非力な俺には彼を担ぐのは物凄く大変だ。
フラフラと進み、生垣に身を隠す。
「大変だったな。姉ちゃん」子供が声をかける。
「……ファルコ。じゃねぇよな? 」あいつはこういう話し方はしないし。
「俺? イーグルってんだけど? 」
うん??? それって???!!
「死んだエイドさんたちの息子? 」「俺が幽霊に見えるかボケ」
即座に返事が返ってきた。しかしなんという毒舌なガキだ。
「親父を知っているのか? 」知ってるも何も。
「3年も姿を見せず、死んだと言われてるぞ? 」
「三年???!!!! てか俺が死んだ?? 舐めんなバカ親父。
確かに一日なのか十年なのかわからんな。この屋敷にいる時間は。
で。このにーちゃんどうする? 捨てとく? 」
それを捨てるなんてとんでもない。捨てたいけど。
「ほっとけば動けるようになる。とりあえずアーリィさんが心配しているから帰ろう」
というか、この不可解な現象はなんだ?? ボロ屋敷が豪華な屋敷になっているんだが。
「無理だ」イーグルは言い放つ。
「どんなに頑張っても生垣の外に出れない。あのジジババを倒さないと駄目らしい」
つまり。
「出れないじゃないか」俺は呟いた。
ロー・アースを鼻であしらう強さのあの爺に勝てる気がしない。
「そーなる。あの時も不意を討ったから当たったんだ」イーグルはそういうと地面を蹴った。