8 イーグル(三人称)
「おい。こっちだこっち」
少女の姿をした者は振り返った。
面倒なので、以後少女と表記する。
よく見ると物陰に6歳ほどの幼児の姿。
ただ、姿に反して言葉遣いはハッキリしている。
「だれ? 」
「俺か? イーグルってんだ」
少年はそういうと舌を鳴らして悪態をつく。
「……くそ! また取り込まれたのか! 」
少女は眉を顰めた。「どういうこと? 」
「しっかりしろ! てめぇの名前を言ってみろ! 」「まりあ」即答。
少年は肩を竦めた。「くそったれ。あのジジババめ! しっかりしないとてめぇもこの屋敷に取り込まれるぞ! 」
少女は不思議そうな顔をしていた。
「ねぇ。イーグルくん」少女の問いに「なんだ? 」と応える少年。
「蛮族の湖上都市? 葦で地面を作ってる」
「……チチカカ市だろ。俺が言ってるのはジジババだ」
子供の姿をしているのに二人とも無駄に学がある。
「てめえがさっきまで一緒に仲良く茶と菓子食ってた爺婆だろ! 」
「おじいちゃんとおばあちゃん? 」「他にいるかっ!!! 」
「おじいちゃんとおばあちゃんは悪い人じゃないよ」「悪い奴だっ! 」
いいか。と前置きして少年が言う。
「この屋敷は俺の友達と其のお父さんとお母さんのモノだったんだが、
友達のお姉さんを追い出してあのジジババが居座っているんだ」
ふーんと少女が返事する。「お父さんとお母さんはどうなったの? 」
遠くから老婆が少女を呼ぶ声がする。
「知るか! とりあえず気をつけろ! 信用するなよ! 」
少年は吐き捨てるように呟くと姿を隠した。