2 呪われた手紙
「ははは。そりゃ大変だったな」熊に見える店主のエイドさんと女将のアーリィさんは笑っていた。
「ファルちゃんのことだから、飽きたら帰ってくるわよ」シチューでも作っておくわとアーリィさん。
何でも、昔二人にいた子供にファルコはそっくりらしい。
どう見ても美少女で通る容姿のアーリィさんと熊にしか見えないエイドさんが夫婦だというだけでも驚きだが、
この二人に子供がいたことはもっと驚きだ。なんでも10年前に結婚したそうだ。
いったい全体、エイド氏がどういう犯罪を犯したのか気になるところである。
夜も更けると酒場は莫迦騒ぎになり、
俺は接客というか、尻に触ってくる客に蹴りを入れ、顔面に平手を打つのに追われた。
そんな中。
「遅いな」エイドさんが呟いた。
「シチュー冷めちゃうわね」アーリィさんも呟いた。
「てつだって〜〜! 」足元で叫ぶくすんだ金髪の幼児も幼児ではない。
宿代代わりにお手伝いをしている冒険者でホーリィというグラスランナーだ。
「ホーリィ、悪いけどファルコを見に行ってやってくれ。何処の屋敷だか誰か知ってるか? 」
エイドさんが考えている間に「いってきま〜す! 」とホーリィは叫び、テーブルを乗り越えて走り去った。
……グラスランナーって奴は皆こんなんなのかっ!!!
と、いうか、何処とも言ってないぞ!大丈夫なのか!!!??
小一時間ほどしてホーリィは戻ってきた。
彼もファルコほどではないが俊足で通っている。
「ふぁるこ、いない」
吊り目の彼は言った。「何処にも、いない」
エイドさんは青ざめ、アーリィさんは眩暈を起こして倒れた。
「どういうことだ??!!」エイドさんの絶叫が響いた。
「ファルコが消えたらしい」「ファルちゃんが消えたって?」店の冒険者達が囁く。
ホーリィは続ける。「衛兵さんに聞いた。街の門には入った。其の後パン屋さんや肉屋さんが見ている。
まっすぐ屋敷に向かった。屋敷に入ったのはわかる。中も見たけどいなかった。
あちこちで聞いたけど、街の外に出た様子はない。屋敷の中に入って、唐突に足跡が無くなってる」
「いったい、何処の屋敷に??? 」エイドさんが呟く。
俺はその屋敷の所在地を告げると、エイドさんの顔は土気色になり、怒気を孕みだした。
(マジで怖いんですけど……)
「そこは呪われた館だっ!!! 何故行かせた!!!!!!! 」